「ミニマリズム」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。ミニマリズムとは、必要最低限の物だけに囲まれ、人間関係も絞ることで、ストレスから解放されることを目指す生き方とされています。服や家具など持ち物を極端に減らし、生活環境をシンプルにすることを理想とし、SNSやブログなどでそのライフスタイルや考え方を発信する人が多くいます。本記事ではAさんの事例とともに、ミニマリストの想定外について、長岡FP事務所代表の長岡理知氏が解説します。※相談者の了承を得て、記事化。個人の特定を防ぐため、相談内容は一部脚色しています。
いつでも夜逃げできるようにしているの?(笑)…冷蔵庫・洗濯機を処分、同じ服が三着とマットレスのみの部屋。親も恋人も“切り捨てた”月収40万円の34歳会社員が「ミニマリスト」を卒業したワケ (※画像はイメージです/PIXTA)

ミニマリストとしての生活

Aさんは引っ越しを機に、持ち物の大半を捨てました。冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、テレビ、私有パソコン、プリンター、タブレット端末をすべて手放し、私用のパソコン、プリンター、タブレット端末も処分。さらには、インターネットのプロバイダ契約も解約しました。

 

身の回りの物も同様に整理し、服も一度すべて手放したうえで、同じ服を上下三着だけ購入。靴はスニーカー1足のみとし、ベッドも処分して、マットレスを敷いて寝るスタイルに変えています。駅の近くに越したことで、自転車もリサイクルショップへ。生命保険も不要と考え、すべて解約しました。

 

キッチン周りも例外ではなく、食器類は大きな皿とスープ皿、箸、スプーン、フォーク、小鍋を、それぞれ一つずつしか持っていません。冷蔵庫がないため、そもそも長期保存が必要な食材は持たず、調味料もごくわずか。そのため、保存容器の類も一切ないという、徹底した暮らしぶりです。

 

当時付き合っていた恋人にその様子をみせたところ、「いつでも夜逃げできるようにしているの?(笑)」とからかわれてしまいました。

 

Aさんはいいます。

 

「冷蔵庫はなくても、近所の24時間営業しているスーパーが冷蔵庫代わりだから不要。洗濯機はコインランドリーがあるし、電子レンジはそもそも使わない、印刷はしないのでプリンターも不要、スマホが一台あれば私用はすべて済む。服は同じものを着まわせば、どれかを洗濯していてもコーディネートに困らない」

 

Aさんはこの生活を「自由な暮らし」と考えていました。リモートワーカーになったことで、苦手だった服のコーディネートに毎朝悩まなくて済み、家電の買い替えや冷蔵庫の中の棚卸も不要です。

 

モノを持たなくなったことで支出は激減。特に光熱費が下がりました。収入の残りはほぼ貯蓄に回し、将来に備えています。目標はFIRE。これもコロナ禍時代に覚えた言葉のひとつです。50歳で仕事を辞めて沖縄に移住し、資産の運用益だけで生活したいという夢ができました。