順調なキャリアと安定した高収入。そんな自信を背景に、「そろそろ資産運用でも」と投資を始めると……。本記事では橋本俊さん(仮名)の事例とともに、高収入であるがゆえに初心者が陥りがちな投資の罠について、FP dream代表FPの藤原洋子氏が解説します。※個人の特定を避けるため、内容の一部を変更しています。
恵まれすぎていました…〈世帯年収1,600万円〉ともに大企業勤務、親の贈与で1億円超のタワマン購入。「30代安泰夫婦」がラウンジで聞いた「儲け話」で、資産と夫婦仲を両方失う悲惨な結末【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

投資失敗が転落への第一歩…お金で揉めはじめる夫婦

俊さんと桃子さんは、すべての投資資金をたった一つの銘柄に集中させていました。2人の投資は、客観的にみると、まるで賭け事のようなものです。高収入という環境に守られて、無謀なリスクをとっているということに、2人はまったく気が付きませんでした。

 

順調にみえた投資は、ある日突然暗転します。投資先の企業が大規模な不祥事を起こしたのでした。報道がされるやいなや株価は暴落。個々の銘柄に定められた一日の値幅制限に達する「ストップ安」が続き、売りたくても売れない状況が続きました。

 

「まさかこんなことが……」資産は日々、目減りしていきます。夫婦の資産は一気に半分以下になってしまいました。

 

パニックに陥った橋本さん夫婦。冷静さは完全に失われています。俊さんは、「いずれ戻るはずだ」とさらに資金を追加。桃子さんは「とにかく少しでも残そう」と焦り、わずかに株価が回復したときに損切りを繰り返しました。しかし、株価は負の連鎖に陥り、抜け出すことは難しい状況です。お互いの意見は衝突、夫婦仲にも亀裂が入りはじめます。最終的に、橋本さん夫婦の投資は、元本のわずか10%未満にまで目減りしてしまいました。

投資初心者が共通して失敗すること

投資で利益が出る人の割合は、どのくらいでしょうか。金融庁が2021年2月に発表した、2020年12月末時点の「安定的な資産形成に向けた金融事業者の取り組み状況」では、投資信託で収益がプラスになった人は、全体の約3割という調査結果です。この結果は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けたもので、2019年3月末時点と比較すると、約半分とされています。投資は、市場の変動の影響を受けるなどの特徴がありますので踏まえておきましょう。

 

投資を初めて行う人が、失敗しがちな投資方法には、いくつかの共通するパターンがあります。

 

・知識が不十分なまま始める。
・投資をする計画や目的が曖昧なまま始める。
・感情に左右された取引をする。
・特定の銘柄に集中的に投資する。
・短期的な利益を追求する。
・損切りのルールを決めていない

 

などが主なものです。投資を始める前に、まず基本的な知識を身に付けましょう。大手金融機関のウェブサイトを確認したり、信頼できる書籍を購入したりして、週末の時間があるときにじっくり学ぶなどはいかがでしょうか。

 

短期間で大きく利益を上げたとする、魅力的なタイトルの本も出版されています。しかし過度な期待は禁物です。投資は得意な人もいれば、あまり得意ではない人もいます。自身に合わせた方法で資産形成を進めることを推奨します。