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妻の退職金も…夫の「善意」が招いた老後破綻の危機
数年前、家の外壁塗装でまとまったお金が必要になった際、恵子さんは貯蓄額を尋ねました。しかし、正さんは「いくらだったかなあ。銀行に任せてるから大丈夫だ」とはぐらかすばかり。不安が大きくなるなか、最悪の形で現実のものとなります。
決定的な出来事は正さんがインフルエンザで寝込んだ日に起きました。税金の支払いのため、正さんから預かったキャッシュカードで現金を引き出した際、明細に印字された預金残高を見て、恵子さんは我が目を疑ったのです。
「そこにあったのは、私が想定していた金額の半分にも満たない数字でした。信じられず、通帳を二度も三度もみてしまいました」
帰宅後、恵子さんは机の引き出しの奥に隠されていた預金通帳を探し出しました。そして、そこに記帳されていた取引履歴を見て、さらなる衝撃を受けます。数十万円単位のお金が、数年にわたって何度も同じ個人名義の口座に振り込まれていたのです。その名前は、正さんの弟のものでした。
「夫を問い詰めると、渋々認めました。弟さんの事業がうまくいかず、資金繰りが苦しいと泣きつかれ、これまで何度もお金を貸していた、と。しかも、『お前の退職金も少し足させてもらった……でも、あいつも頑張っているんだ。いつかきっと返してくれる』なんて」
人に頼られると断れない。困っている身内を見過ごせない。それは一見すると優しさや人情味に溢れた行為に思えるかもしれません。しかし、何の相談もなく、妻の退職金にまで手をつけていたとなれば、裏切り以外の何物でもありません。
「信じた私がいけなかった……今さらながら痛感しています。『心配ない』という楽観的な言葉を鵜呑みにせず、もっと早く、通帳を自分の目で確認すべきでした」
この一件以来、家計管理は恵子さんがすべて行うことになったといいます。
[参考資料]
株式会社400F『オカネコ 結婚に関する意識調査』