高齢の親と暮らす未婚の子は、今や決して珍しい存在ではありません。しかし、その近すぎる距離感が、時として親子共に自立を妨げる「束縛」に変わってしまうことがあります。また、その関係性を変えようとするとき、時に苛烈なものとなるようです。
ママ、もう頼らないで…40歳「実家を出たことのない娘」が告げた「絶縁宣言」。年金月7万円・68歳母の慟哭 (※写真はイメージです/PIXTA)

「あなたがいなくなったら…」一つ屋根の下、母の呪縛に苦しんだ40年

「常に母の視線を感じながら生きてきました」

 

山中美咲さん(40歳・仮名)は、現在都内の会社で働いています。半年前までは地元の東北地方で、5年前に父を亡くしてから母・好子さん(68歳・仮名)と2人暮らしを続けてきました。その暮らしは、美咲さんにとって息が詰まるような日々の連続だったと振り返ります。

 

「子どもの頃から母の干渉は強く、交際相手にまで口出しをしてきました。何度か、母親が原因で別れたこともあります。5年前に父が亡くなり、2人きりの生活になってからは、束縛は異常なレベルになりました。帰宅すれば『今日は誰と会っていたの?』『どうしてこんなに遅いの?』という質問攻め。私の部屋にも断りなく入り、クローゼットの中までチェックする始末……」

 

休日に友人と出かける計画を立てると、好子さんは決まって体調不良を訴えるのでした。「ママを一人にしないで……」。夫(美咲さんの父)を亡くし、近い親戚もいないため、頼れるのは娘しかいない。そうした状況から依存するのも仕方がないのかもしれません。しかし、美咲さんにとっては、自分の時間や人間関係がすべて母の管理下に置かれているようで、息が詰まる思いだったといいます。一方で、そんな母親をないがしろにすることができない自分もいました。

 

厚生労働省『令和5年 国民生活基礎調査』によると、高齢者のいる世帯のうち、「親と未婚の子のみの世帯」は383.6万世帯。高齢者世帯の18.5%を占めます。このなかには美咲さんのように、親子が共依存にあるケースもあるでしょう。物理的な距離が近い同居生活は、時として親子の精神的な依存を加速させ、それぞれの自立を妨げる呪縛となることもあるのです。