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「年金月25万円」の余裕が一転…突き付けられた非情な宣告
「まさか、こんなことになるとは思ってもみませんでした」
田中明夫さん(72歳・仮名)。中堅の機械メーカーに勤め、60歳定年後は再雇用でそのまま働き続け、68歳で退職。数年前に妻に先立たれ、現在は一人暮らし。子どもたちはそれぞれ家庭を持ち独立しています。
65歳から受け取る予定だった年金は月19万円ほど。繰下げ受給を利用し、年金受取額は30.1%増額。現在、月25万円ほど手にしています。
「手取りにすると21万円くらい。これくらいあれば、普通に暮らしていける。物価高、物価高と騒いでいるけど、そんなに節約を意識しなくてもいい。気楽なものだった」
総務省統計局『家計調査 家計収支編 2024年平均』によると65歳以上の単身無職世帯の住居費を除く消費支出は月平均で13万0,068円。8万円ほど余裕があるうえ、住宅ローンは完済済みの持ち家。老後を安心して暮らしていくための貯蓄も十分にあります。
「趣味の山歩きにも毎週のように出かけていましたし、健康だけが取り柄だと思っていたんです。この年ですから、いずれは病気になるけど、1人だから……万一の備えといえば、若いころに入ったきり、ほとんど見直すこともなかった保険に加入しているくらいだった」
異変が起きたのは、半年前のこと。食欲がなく、体重が急に落ち始めた。近所のかかりつけ医の紹介で大学病院の精密検査を受けた結果、告げられたのは「希少がん」という非情な宣告でした。
医師からは標準治療として手術と抗がん剤治療の提案がありました。これらはもちろん公的医療保険が適用。しかし、さらに説明が続きます。
「田中さんの場合、より効果が期待できる新しい治療法もあります。ただ、まだ保険適用となっていない先進医療になります」
提示された治療計画書に書かれた金額を見て、田中さんは言葉を失います。総医療費月100万円。そのうち、先進医療が月20万円。ざっと計算すると、月の自己負担額は26万円近くになります。