定年後のスローライフは、多くの人が描く夢の1つです。しかし、その夢を実現するために大きな一歩を踏み出したものの、計画通りにはいかない厳しい現実も。誰もが思い描く理想の暮らしを手に入れたはずの男性が、なぜ「笑えない結末」を迎えてしまったのでしょうか。
自由な老後を夢見て…〈退職金2,000万円〉を地方移住につぎ込んだ62歳男性、わずか1年で直面した「笑えない結末」 (※写真はイメージです/PIXTA)

理想と現実のギャップ…妻の心に忍び寄る影

元々、地方出身の誠一さんにとって、田舎暮らしは望郷を誘う、心地のいいものでした。一方で東京生まれ、東京育ちの智子さんにとって、田舎暮らしは苦痛でしかなかったのです。

 

最寄りの店まで車で20分。しかも品ぞろえを期待できない地元の商店で、大手コンビニまではさらに車を20分走らせないといけません。畑仕事は大嫌いな虫との格闘。しかも知り合いはおらず、毎日が孤独との戦いでした。そんな智子さん、田舎暮らしのストレスでしょうか、心療内科で軽いうつ症状と診断され、これ以上田舎暮らしは続けることはできないと断念することになったのです。スローライフ開始から、わずか1年のことでした。

 

株式会社クランピーリアルエステートが行った調査によると、77%の人が移住に満足している一方で、移住をやめた人の7割が3年以内で早期離脱しています。また地方移住した36.6%が「移住先で孤独を感じたことがある」と回答しました。さらに地方移住を辞めた人のその理由を聞いたところ、最多は「生活環境の変化に適応できなかった」の12.7%。「買い物が不便だった」、「交通手段が限られており、移動が不便だった」(ともに11.7%)と続きました。やはり田舎暮らしのネックとなるのは不便さ。それを上回る魅力があったとしても、すべての人が魅力と感じるかは別問題。智子さんにとって田舎暮らしの不便さは大きなストレスであり、克服することのできない大きな壁です。

 

都会のストレスから解放されたいと、地方への移住が注目されていますが、都会との接点を完全に断ち切ることが逆にストレスを生むことも珍しくありません。「環境がいい」というものの、結局は、合うか合わないかは人それぞれです。

 

「妻に私の田舎暮らしの夢につき合わせてしまい、本当に申し訳ないことをした。お互いが心地いいところで、ゆったりとした老後を過ごすことができたらと考えています」

 

[参考資料]
株式会社クランピーリアルエステート『【地方移住】やめた人の7割が3年以内で離脱!地方移住成功の秘訣とは?』