物価高騰と、伸び悩む賃金。そんな時代にあって、「節約」は多くの人にとって生活を守るための必須スキルとなっています。しかし、そのあまりの切実さから、いつしか節約が“目的”となり、度を越した行動に走ってしまう人がいるようで……。本記事では社会保険労務士法人エニシアFP代表の三藤桂子氏が、Aさんの事例とともに行き過ぎた節約術に潜む、思わぬ落とし穴について解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
お金ないから公衆トイレで…年収280万円・43歳事務職の女性が友人に明かす「開いた口が塞がらない」度を超えた節約術【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

同僚絶句の節約術

先日、Aさんは親しくしている同僚のBさんに誘われ、たまにはプチ贅沢をしようと外食に出かけました。食事のあと、「せっかくだからもう1杯」という話になります。内心「2軒目はちょっとな……」と思ったAさんは、外食先が自宅近くだったこともあり、自宅での飲み直しを提案します。

 

Aさんの自宅を初めて訪れるBさん。節約を徹底していると話す友人が、一体どんな暮らしをしているのか、少し楽しみでもありました。古いアパートでしたが、部屋の中は整頓され、物が少ない印象です。窓際には手作りプランターでプチトマトなどが育てられており、「さすが節約の王道だね」と話していたBさん。壁際に水の入ったペットボトルが数本並んでいるのが、少し気になりました。

 

「トイレ、使わせてほしい」とBさんが告げると、Aさんから驚きの言葉が返ってきます。

 

「あ、トイレは、そのペットボトルの水で流してね」

 

「災害でもないのに、故障? 大変だね」とBさんが尋ねると、Aさんは悪びれもなく答えました。水道代がもったいないから、普段は近くの公衆トイレを使い、夜など行かれないときのために、公園などで汲んできた水をペットボトルに貯めている、と。トイレの水だけでなく、プランターの水やりにも使っているそうです。

 

さすがに、やりすぎではないか……。Bさんは、開いた口が塞がらないほどの節約術に、ただただ驚くしかありませんでした。

「節約」ではなく「犯罪」?

後日、BさんはAさんに「その方法は節約術というより、窃盗罪になる可能性があるから控えたほうがいい」と助言しました。「窃盗罪」と聞いて驚いたAさんは、新たな節約術を考えることにしたといいます。

 

さまざまな節約術がありますが、「節約」とは、あくまでムダを省いて消費を切り詰めることです。しかし、公共施設の水道から水を無断で持ち去る行為は、節約とは呼べません。公園や公衆トイレの水道は、自治体などが公共の利用のために管理しているものです。目的外の利用は、犯罪になる可能性も十分にあります。

 

節約に励むことは大切ですが、法律に抵触するようなことがないよう、正しい知識を持って実践しましょう。

 

〈参考〉

総務省:2024年(令和6年)平均消費者物価指数の動向
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

厚生労働省:毎月勤労統計調査 令和6年分結果速報
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/r06/24cp/dl/pdf24cp.pdf

 

 

三藤 桂子

社会保険労務士法人エニシアFP

代表