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相続税対策に頭を悩ませているなら、実は「不動産」があなたの強い味方になるかもしれません。ただしポイントは“長く持つ”こと。不動産は現金よりも相続税評価額が低くなる傾向があり、長期保有によってその節税効果はグッと高まります。この記事では、短期保有と長期保有の違い、なぜ長期保有が相続に有利なのか、不動産投資による資産圧縮の仕組みを、わかりやすく解説します。

短期vs長期保有:どれくらい税額に差が出る?

不動産投資は魅力的な資産形成手段の1つですが、その成功のカギは「長期保有」することにあります。一方で、短期保有も一定のリターンを期待できる場合がありますが、不動産投資においては長期保有のほうがメリットがあるといわれています。

メリット1:インフレに強い資産を守れる

まず不動産の利点としては、インフレに強い資産が手に入るということです。ここ最近の日本は日銀がマイナス金利政策の解除をしたことなどもあり、インフレ傾向にあります。

 

不動産は実物資産であるため、インフレに強いという特性を持ちます。昨今の物価高になってきているという経済状況において、不動産はインフレ対策として有効な投資手段とされています。

 

経済がインフレ状態となりますと、現金や預金などの貨幣価値は価値が目減りしていきます。一方、不動産は、地域の発展や需要と供給のバランスによって価値が上昇する傾向があります。実物資産である不動産は、経済の変動に対して比較的安定した反応を示し、インフレの影響を相対的に受けにくい資産とされています。こうした背景から、インフレ対策や資産の保全手段として、不動産の購入を検討するかたが増えています。
 

メリット2:売却時の税金が大幅に軽減される

長期保有の最大のメリットとして、不動産を売却した際の譲渡所得税の軽減効果があげられます。

 

譲渡所得税は、不動産売却時に得られる利益(譲渡所得)に対して課される税金で、所有期間によって税率が異なります。

・短期譲渡所得(保有期間5年以下):税率 39.63%
・長期譲渡所得(保有期間5年超):税率 20.315%

 

不動産の保有期間がその年の1月1日において、保有期間が5年を超えるだけで、税率がほぼ半分になります。

 

たとえば、売却益が500万円の場合、税額の差は以下の通りです。

 

・短期譲渡:税額 約198万円 (500万円×39.63%)
・長期譲渡:税額 約101万円 (500万円×20.315%)

 

その差は約97万円にもなります。

 

また、相続後に売却する場合でも、相続人は不動産の取得時期を引き継ぐことができるため、被相続人の保有期間を含め5年以上経過していれば、譲渡の際は税額を軽減されます。長期保有は将来の売却まで見据えた賢い選択といえるでしょう。

まとめ 

平成27年の相続税法の改正(基礎控除額を縮小)以来、相続税の申告件数は年々増加しております。平成27年には相続税の申告件数は103,043件でしたが、令和5年は155,740件と1.5倍と大きく増加することとなりました。

 

現在は約10人に1人が相続税の課税対象者となっている状況です。都市部に自宅などの不動産を保有している場合、相続税の対象となる可能性は高く、相続税は決して富裕層だけではなく、一般的な状況となりました。

 

また近年は、路線価や日経平均株価も上昇傾向にあり、今後も相続税の対象者は増えることが予想されます。
 

 

 

宮路幸人

税理士