ダイエットをしていると突然体重が減りにくくなったり、まったく減らなくなったりすることがあります。そのようなとき、焦って対応を間違えてはいけません。肥満・脂肪肝の専門医である尾形哲氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術【増補改訂版】』(KADOKAWA)より、42歳女性の事例をもと、誤解が多い「ダイエット」と「水分」との関係についてみていきましょう。
ダイエットにまつわる危険な誤解…減量中は「水分摂取量」を増やしたほうがいい理由【医師が解説】
ダイエット中の「水分控え」は逆効果
「由美さん、こんにちは。調子はいかがですか?」
先生は変わらない笑顔で迎えてくれた。でも、私は先生に合わせる顔がない。
「体重、1.5㎏しか減らせませんでした。だめですね、私……」
「そんなことはありませんよ。食事記録を見せてもらいましたが、主食の量を守りつつ、野菜たっぷりでタンパク源も加えられたことがわかります。由美さんの食事方法は間違っていませんよ。それに、血液検査の結果はAST27、ALT50、γ-GTP18まで下がっています。すばらしい結果です」
すぐに気持ちは上向かなかったけれど、肝臓のことを思うと私に残された選択肢は1つだけ。元気な肝臓を取り戻すことだ。ありのままを先生に話そう。
「体重が減らないことで焦って、たくさん汗をかくまで湯船に浸(つ)かったり、水分摂取量を減らしたりもしました」
「それはかえって逆効果です。水を飲んでむくんで太るというのは誤解ですし、体重が増えても一時的なもの。お風呂で汗をかいたり、水分を控えたりしても、脂肪は落ちません。むしろ、体内の水分が少ないと肝臓への血流の量が落ちて、太りやすくなります。減量中だからこそ、水やお茶は意識してたっぷり飲むといいですよ」
「そうですよね。わかってはいたんですけど……」
「食事の前後30分の間にスクワットをするといいですよ。机かイスの背もたれに両手をかけた状態でゆっくり行うと安全です。10回2セットを1日1回から始めてみてください。大きな筋肉を鍛(きた)える筋トレになりますし、むくみの解消にもよっぽど効果的ですよ」
〈先生からの処方箋〉
減量中は水を普段より多めに! 減らしても、体から水分が減るだけで脂肪は落ちません。
尾形 哲
長野県佐久市立国保浅間総合病院
外科部長/「スマート外来」担当医