(※写真はイメージです/PIXTA)
子どもの「遊びや体験活動の費用」「将来の貯金」を削らせないために
Aさんのように、自分ではどうしようもない事情で奨学金を借りた若者は少なくない。親の事業不振、失業、病気など、予測不能な出来事で進学資金計画が崩れる例は多い。奨学金は夢を諦めずに学びを続けるための重要な制度だが、卒業後は長期的な負担となる。
NPO法人キッズドアの「2025夏 子育て家庭アンケート調査報告」によると、ほぼすべての家庭が物価高による家計悪化を感じ、約8割が子どもの「遊びや体験活動の費用」「将来のための貯金」を削っている。昨年と比較して賃金が上がったと答えた家庭も、その約9割が「賃金の増加幅は物価上昇に対して十分だと思っていない」と回答した。今後、奨学金を借りざるを得ない家庭はさらに増えるとみられる。
こうした状況のなかで注目されているのが、企業による「奨学金返還支援制度」。これは、企業が従業員の奨学金返還を肩代わりする制度で、多くの場合、支援額は給与と見なされず所得税や社会保険料が課されないため、従業員にとって経済的なメリットが大きいのが特徴だ。さらに、人手不足に悩む企業にとっても、若者の採用や定着につながる、双方にメリットのある制度として関心が高まり、導入社数は増加を続け、2024年10月末時点で2,587社に達している。
不測の事態で借金を背負った若者が安心して学び、働き、返還し、またその資金が次世代の学びを支える。このサイクルを支える社会づくりは、企業や地域、そして日本全体の活力に直結するだろう。
〈参考〉
2025 夏 子育て家庭アンケート調査結果報告
https://kidsdoor.net/data/media/posts/202507/2025_WEB.pdf
大野 順也
アクティブアンドカンパニー 代表取締役社長
奨学金バンク創設者