物理編
物理は、苦手意識のある人にとっては、理系科目の中で最も取っつきにくい科目ではないでしょうか。高校物理は力学の単元から始まりますが、可視化できない「力」というものを自分の中でイメージしたうえで、さらに計算等の処理をしなければならないことが、その取っつきにくさの原因と思われます。苦手意識を克服し、物理の基礎力を身につけるためには、以下の4つのステップで学習を進めてください。力学分野を例に説明していきます。
Step 1 イメージを明確化する
物理の問題を読んだ際に、まず真っ先にやるべきことが「イメージの明確化」です。例えば、力学分野の問題では対象としている物体に外部から力(外力)が働いている場合と、対象としている物体系でお互いに及ぼしあう力(内力)しか働いていない場合では、式を立てるときの方針が大きく異なります。
そのため、問題を読んだらまずはどのような力がどちら向きに働いているのかを図中に矢印(ベクトル)で書き込む習慣を必ずつけましょう。
また、「物体Aが物体Bを右向きに押す力」「物体と床の間に働く進行方向と逆向きの摩擦力」といった具合に、それぞれの力の種類と向きを言語化してみましょう。このように、目には見えない力というものを、矢印(ベクトル)という形で可視化し、言語という形で具体化することが、力学分野の問題を解いていくうえでの一番の土台となります。
Step 2 公式・法則の使い方を理解する
次に、公式・法則の使い方を確実に理解します。「公式・法則の使い方」と表現すると、文字式で表現されたそれらを暗記して、ただ数字や文字をあてはめれば良いと考える受験生が多いようですが、大切なのは「どのような場面で公式・法則を使うのか」を理解することです。
例えば、「物体にFAとFBの2つの力が働いていて、物体が静止(または等速直線運動)している場合」には、2つの力がつり合っていることになり、『力のつり合いの式FA=FB』を用いて立式をすることになります。
また、同じく「物体に一定の大きさのFAとFBの2力が働いていて、物体が加速度運動している場合」には、力はつり合っていないので、FAとFBの合力をFとすると、『運動方程式ma=F』を使った立式になります。このように「○○なので□□の公式・法則を使う」と、言葉で説明できるようになることこそが「公式・法則の使い方を理解する」ということです。
また、正確に公式や法則を使えるようにするためには、まずは教科書などを使ってその成り立ちや意味を正確に理解することが不可欠です。なお、熱力学の分野では、公式を導き出す過程そのものを問う問題も、多くの大学で出題されています。
Step 3 物理の計算処理に慣れる
次に、 「物理の計算処理に慣れること」も重要です。物理では、文字を用いた繁雑な計算を求められることが多々あります。これはとにかく慣れていくしかありません。そのためにも普段から、途中の計算を省略せずに、速く正確に手を動かしながら計算する練習をしましょう。むろん物理だけでなく、数学の学習をする際にも同じことを意識すべきです。
Step 4 典型的解法を完全に定着させる
最後に、典型問題を見たら解法がすぐに判断できるようアウトプットを繰り返します。これにより「解法の瞬発力」を身につけます。何度か解いたことがある問題であれば、いちいち解かなくても、問題を見て解法を頭に浮かべるだけでも大丈夫です。限られた時間を有効に使いながらアウトプットの練習をしましょう。
可児 良友
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括


