生物編
生物の学習において最も核になることは、基本的な用語やしくみを正確に理解し、確実に暗記することです。各単元の生命現象は、しくみや発現の仕方に縦横の「つながり」があるので、覚えることは多いものの、この「つながり」が理解できていれば定着は早くなります。
Step 1 教科書(参考書)を読む
生物の基礎を固めるためには、教科書(または教科書の代わりとなる参考書)を読むことが一番の基本になります。まずは教科書を章ごとにしっかりと読んで内容を理解しましょう。
その際に、文章だけを読み進めるよりも、図などを併用しながら確認していくと理解がしやすくなります。例えば腎臓における「ろ過」や「再吸収」を学ぶ際には、『スクエア最新図説生物』(第一学習社)、『視覚で捉えるフォトサイエンス生物図録』(数研出版)などの資料集に掲載されている図を用いて、教科書の文章に書かれている「血液から原尿へとこし出される物質の流れ」や「原尿から血液へと再吸収される物質の流れ」を視覚的にも捉えましょう。
その後、再度自分の頭の中で物質の流れをイメージ化することによって、文章を読んだだけのときとは比べものにならないくらい理解が深まります。
Step 2 基本問題を解く
各単元の内容をおおむね理解できたと感じたら、次は教科書の章末問題や『セミナー生物基礎+生物』(第一学習社)、『リードα 生物基礎・生物』 (数研出版)などの教科書傍用問題集の基本問題を解きながら(発展・応用問題は飛ばしておく)、覚えるべきことを覚えるとともに、本当に理解ができているかを確認します。
その際には、ただ単に答えを覚えるだけではなく、他の人に生物用語の意味や生命現象のしくみ、問題への考え方を説明できるくらいまで理解することを目標としてください。
基本問題だからといって軽んじるのではなく、スラスラと解けるまで繰り返し解くこと、そしてそのことを通して、各単元の内容や生命現象をそれぞれストーリーのように、自分の言葉で説明できる(言語化できる)レベルまで理解を深めることを意識して学習してください。
Step 3 計算問題の解き方を理解する
生物の計算問題が苦手という人もいると思いますが、単純に計算そのものが苦手というよりも、式の立て方や公式の使い方がわからないということが多いのではないでしょうか。
これは、公式の成り立ち・意味、公式の基になる生命現象そのものの理解不足が原因になっていることがほとんどです。公式や計算方法を丸暗記しているだけでは、典型的な問題には対応できても、少し条件や問われ方が変わると通用しません。
また、呼吸やアルコール発酵の反応式が書けない、DNAの複製・転写・翻訳のしくみがきちんと理解できていない、運動神経の興奮から筋収縮までの流れが説明できない、など、生命現象そのものを正確に理解していなければ、当然ながら式は立てられません。それだけではなく、現象そのものの理解不足は、計算問題以外の知識問題や考察問題においても致命的です。
したがって、公式や解法を丸暗記するのではなく、公式そのものの成り立ち・意味や使い方、そこで扱われている生命現象をしっかりと理解して立式する姿勢を身につけることが重要です。
Step 4 知識・解法を完全に定着させる
なお、初めて生物を学習する場合、次々と新しい情報をインプットしていく必要があり、最初の頃に学んだことを忘れてしまうことがよくあります。それを防ぐためにも、教科書の章ごとに学習を進めながら、2~3 章前の内容について教科書傍用問題集の基本問題を解き直す「復習(アウトプット)」を同時に進めることが重要です。
また、知識の定着に不安がある受験生には、『必修整理ノート生物基礎』『必修整理ノート生物』 (文英堂)や『リードLightノート生物基礎』『リードLightノート生物』 (数研出版)などのような市販のサブノートを使って学習内容をまとめる作業や、一問一答式の問題集を通学などの隙間時間を使って繰り返すなどをお勧めします。
そして、基礎固めのゴールは、 「各単元で学んだ生命現象をスラスラ説明できる」、「基本問題は見た瞬間に解法が言語化できる」という状態です。これで、生命現象の理解と応用問題を解くために必要な知識の定着と基本問題の解法定着ができたことになります。
生物学は科学でありながら多様性が極めて高い学問です。普遍性や再現性が求められるのが科学の原則ですが、生物学の場合は、適者生存という進化論(ダーウィニズム)をベースにしつつも、進化の過程で偶然そうなったという生命現象も少なからずあります。そのような非合理的な現象も含めて多種多様な生命現象を進化の結果の物語として捉え、その中に共通性を見出していく柔軟な姿勢が必要です。
また、生物学のもう1つの特徴としては、分子レベルで細胞の特徴を学び、地球レベルで生態系を学ぶというような幅広い階層性があります。それぞれの階層間の関連を意識しながら、「木を見て森も見る」という姿勢で学んでいくことも重要になります。
可児 良友
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括


