面接試験が厳しいってホント?
2021年度から本格的に進められた大学入試改革によって、一般選抜でも「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を評価することが求められるようになりました。さらに最近の医学部入試では、医師や医学研究者としての適性の評価にウエイトを置くようになっているため、面接の結果はかなり重視されています。
点数化する大学と点数化しない大学がありますが、点数化しない大学では合否判定の資料として重視しており、点数化の有無にかかわらず、募集要項などに「面接の評価が著しく低い場合は、学力検査の結果に関係なく不合格とする」と記載している大学も多くあります。
特に国公立大では、ほとんどの大学が募集要項に同様の記述や「面接の評価が一定水準以上の者を合格とする」などと、明記しています。
下記の表は2025年度入試における面接・適性試験を含めた国公立大医学部の個別学力試験(2次試験)の配点について、いくつかの大学をピックアップしたものです。
一般選抜においても学科試験より面接試験の配点が高くなっている大学が増えています。例えば、筑波大学では学科試験については、英語、数学、理科がそれぞれ300点であるのに対し、適性検査も含めた人物評価が500点の配点となり、配点比率がかなり高くなっています。
また京都大学は、入学者選抜要項に下記の内容を記載しています。京都大学はかつて、面接を50点満点で点数化していました。
当時は、センター試験と個別試験を合わせて1,300点満点のうちの50点でしたから、面接の点数が低くても学科試験の点数が高ければ合格できる可能性がありました。しかし近年では面接の点数化をやめ、面接の結果のみで不合格にできるようになりました。
面接では人の命を預かる医師としての適正、コミュニケーション能力などを幅広くチェックされ、患者さんから信頼される医師にはなれないと判断された受験生は、どんなに学科試験の結果が良くても合格することはできません。
学校推薦型選抜や総合型選抜では、特に面接試験が重視されており、長い時間をかけて行う場合もあります。ある国立大の学校推薦型選抜では、数時間にわたるワークショップが課せられたこともあります。例えば「大学病院を改善する」というテーマでは、まず問題点をディスカッションさせ、付せんに書き出して整理して発表し、どう改善するのかをまとめます。面接担当者は、この流れの中で受験生の医療に対する関心度や、リーダーシップ、さらにコミュニケーション能力などを見ているわけです。
面接試験はさまざまな方式で受験生の適性をチェック
面接の形式には、個人面接、集団面接、集団討論(グループディスカッション)、MMI(multiple mini interview)の4つに大別され、さらに個人面接と集団討論、集団討論とMMIというようにいくつかの形式を組み合わせて行う大学もあります。また、事前にアンケートや作文を書かせて、それに基づいて面接を行う大学も多くあります。
①個人面接
医学部では最も多く見られる形式で、面接官は2~3人の場合がほとんどです。時間は15~20分程度ですが、なかには30分以上の場合もあります。また、必要に応じて当初の予定から面接を追加して行い、受験生をじっくり観察するケースもあります。
②集団面接
複数の受験生に対して質問を行う形式で、面接官は複数の場合がほとんどです。時間は比較的長く、20~40分程度のケースが多いようです。一人ひとりを詳細に見ることができないので、最近は減少傾向にありますが、群馬大学、山梨大学、富山大学、信州大学、徳島大学など一部の国立大学で行われています。
③集団討論(グループディスカッション)
複数の受験生にテーマを与えてディベートやディスカッションをさせる形式です。ディベートは、受験生を賛成グループと反対グループに分け、テーマを与えて、なぜ賛成か、反対かを討論させます。近年多いディスカッションは、与えられたテーマについて、それぞれが意見を出し合い、最も良い結論を導き出します。
特にディスカッションでは、コミュニケーション能力と協調性、積極性(リーダーシップ)、主体性などを中心にチェックされます。
国公立大では、富山大学、岐阜大学、名古屋市立大学、三重大学、滋賀医科大学、大阪公立大学、徳島大学、高知大学、熊本大学、宮崎大学、大分大学など、私立大では自治医科大学、日本医科大学、東邦大学、東京女子医科大学、帝京大学、東海大学、北里大学、金沢医科大学、藤田医科大学、福岡大学などで実施されています(一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜を含みます)。
④MMI(multiple mini interview)
MMIとは個人面接を複数回行うものです。この形式ではある場面設定が与えられ、それに対して自分がその状況をどのように捉え、どう対処するかを考えて、プレゼンしたり、面接官とディスカッションしたりすることが多いです。
国公立大では北海道大学、東北大学、福島県立医科大学、筑波大学、千葉大学、横浜市立大学、神戸大学、山口大学などが、私立大でも岩手医科大学、獨協医科大学、自治医科大学、埼玉医科大学、国際医療福祉大学、慶應義塾大学、東京医科大学、東京慈恵会医科大学、東邦大学、帝京大学、金沢医科大学、藤田医科大学、大阪医科薬科大学、関西医科大学、兵庫医科大学などが導入し、集団討論とともに最近増えている形式です(一般選抜・学校推薦型選抜・総合型選抜を含みます)。東京慈恵会医科大学では2024年度一般選抜において、下のような設定のMMIが実施されました。
東京慈恵会医科大学のホームページには、「MMIでは、自分の考えを表現する能力、社会における自分の役割を考える能力、知識を基に状況を理解してどのような行動が適切かを判断する力、論理的思考力などについて評価するために、評価者と受験生が1対1で話し合う対話形式の面接で、一人あたり異なる6課題が課されます(1テーマにつき7分間の面接)」と記されています。
MMIの導入は面接官によるバイアス、有利・不利を解決するのも大きな理由の1つで、昨今の面接重視化の傾向を示すものです。
個人面接でも集団面接でも、一般的には志望理由、志望動機、「なぜ医学部を目指すのか」、「なぜこの大学を選んだのか」などが聞かれると考えがちですが、近年は医師としての適性を判断するような質問がいろいろ試みられています。関心のある医療ニュースはどこの大学でもよく聞かれますが、曖昧な知識で答えるとさらに追及されることになりかねませんから、周到な準備が必要です。
また、ある状況設定の中でその人がどういう行動を取るのかを見る質問はMMI以外でもあります。例えば、「もしあなたが内科の医師として被災地に派遣されたとする。現地では物資も足りないし、医師も足りない。そこへ外科的な処置が必要な患者さんが来たら、あなたは外科的な処置をしますか」という課題が与えられ、各自が意見を述べたり、グループで討論したりします。
東邦大学では集団討論とMMI(4回の面接)を行っています。集団討論は与えられたテーマについて15分間で討論を行い、全員の考えをまとめて発表します。2024年度の集団討論では『霧がかかった草原の中、単線を走る電車の屋根に、猫背の男性が座っている写真』を題材にグループで討論し、意見をまとめて発表する」などが出題されています。MMIは、3分間の面接が4回行われ、それぞれ1つのテーマについて質問されます。
従来の形式の面接では、受験生の多面的な能力や医師としての適性を評価するのが難しいため、さまざまな形式の面接が行われるようになりました。面接の回数を増やし、内容も変えることで、多面的な評価が可能になるのです。
可児 良友
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括

