化学の得点力アップに欠かせない「理解」と「定着」
化学で医学部合格レベルに到達するためには、基礎事項の「理解と定着」が不可欠です。最終的に入試問題で合格点を取るためには、当たり前のように理解し使いこなせる範囲を広くしておく必要があります。
理解はしていても定着が弱く、試験のたびに頭をひねって考えているようでは、試験時間内に解き切れなかったり、ケアレスミスを頻発したりします。また、丸暗記で知識や解法の定着はできていても、理解が浅ければちょっとした問題内容の変化に対応できなくなってしまいます。「理解したうえで瞬時に使えるように定着させる」ことが大変重要になってきます。
化学の学習内容には、数学や物理のように理論・理屈・考え方・計算を中心とする部分(主に理論化学)と、知識・系統分類・暗記を中心とする部分(主に無機化学・有機化学)があり、その両軸を揃えないと高得点を見込めないという面があります。常にこれらを意識して化学の学習を進めていくことがカギとなってきます。では、具体的にどのような学習方法で進めれば良いのでしょうか。
化学の基礎を固めるために準備するものは基本的には2つだけです。教科書(または教科書の代わりとなる参考書)と基礎~標準レベルの問題集です。使用する問題集は高校で教科書傍用として配布される『セミナー化学基礎+化学』(第一学習社)、『リードα 化学基礎+化学』(数研出版)などが最適です。ただし、基礎固めの段階では、発展・応用問題は飛ばしておきましょう。これらを1単元ごと進めていくと良いでしょう。
Step 1 教科書(参考書)を読む
完璧である必要はありませんが、書いてある内容を理解しながら読んでください。教科書にあまり興味が持てない人は、図やイラストを多用し、嚙み砕いた話し言葉で書かれている参考書を代わりに使ってもかまいません。
Step 2 基礎~標準レベルの問題集に取り組む
1つの単元の内容をいったん頭に入れたら、次に問題集に取りかかります。一度教科書を読んだだけなので、すぐに解けるわけはありません。知識もないのに考えても時間の無駄になるので、この段階ではわからなければ割り切って解答を確認しましょう。
ただし、解答の確認を単なる正誤チェックで終わらせてはいけません。必ず解説を熟読し、教科書・参考書の該当部分をもう一度読み直すなどして理解を図ってください。このとき、特にわからなかった問題については、考え方や重要ポイントなどを自分の言葉で言語化して確認しましょう。これができれば確実に理解できているはずです。この学習サイクルを繰り返すうちに徐々に知識が定着していきます。
Step 3 知識・解法を完全に定着させる
基礎~標準レベルの問題は何度も解きましょう。繰り返す回数は人によりますし、単元にもよるでしょう。最初の数周は時間がかかりますが、理解、定着、暗記が進むにつれて、短時間で1周できるようになります。
基本となる教科書、問題集と併用して活用したいのが一問一答式の問題集と資料集(図説)です。「理解したうえで定着」と言いましたが、定着させるには努力が必要です。通学時間などを活用して、何度も繰り返さないと記憶に定着していきません。
そのためにはコンパクトな一問一答式の問題集が役立ちます。語呂合わせなども紹介されているので、上手に活用して知識の定着を図りましょう。『化学基礎一問一答【完全版】2nd edition』『化学一問一答【完全版】2nd edition』(いずれも東進ブックス)や『大学入試ランク順 高校化学一問一答』(Gakken)などがお薦めです。
また、分子の構造や実験器具の各部の名称や使い方、沈殿物の色など具体的なイメージで捉えたほうが覚えやすいものは資料集(図説)を活用してください。右脳タイプの人は、イメージを活用したほうが効率良く覚えられると思います。
最終的に基本問題であれば、見た瞬間にその解法がすぐに思い出せるようになるまで繰り返しましょう。
とにかく基礎が最も大切です。教科書レベルの内容、なかでも土台となる知識や考え方を身につけることが重要となります。中学校の理科で学ぶ化学の内容は、限られた物質、限られた化学反応、限られた計算が対象となるので、丸暗記を中心とした学習でも何とか対応できます。しかし、高校で学ぶ化学は、扱う物質の種類や反応の種類も多く、計算も複雑です。原子の構造や結合のしくみ、化学反応のしくみやプロセスなどを理解しながら定着させ、応用できる土台を築いていかないと対処できません。
基礎レベルが固まっていないのに、標準レベル、応用レベルと難度を上げて学習を進めると、表面的な丸暗記になってしまい、結局は定着できず学習効率が悪くなってしまいます。多少時間がかかっても、基礎レベルは自信が持てるまで繰り返して理解と定着を図り、自分の言葉で説明できるようになること、さらに瞬時にそれをアウトプットできるようになることを心がけましょう。

可児 良友
医系専門予備校メディカルラボ 本部教務統括


