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順風満帆だった会社員人生からの転落…きっかけは「新NISA」
都内の中堅メーカーで40年間、営業一筋で働いてきたという山田健一さん(62歳・仮名)。大きな失敗もなく、2人の子どもを育て上げ、60歳で定年を迎え、その後は再雇用で契約社員として働いています。しかし、役職はなくなり、給与は現役時代の5割程度にまで減少。手取りは30万円にも届きません。
「現役時代と同じような生活はできないと痛感しました。老後を見据えて多少の貯金もあり、退職金も2,200万円ほど受け取りましたが、今後、家のリフォームや車の買い替えなども考えると心もとない。このままではいけないと、焦りだけが募っていきました」
株式会社パーソル総合研究所が2021年に行った調査によると、定年後再雇用で年収は平均44.3%減。「50%以上下がった」という回答は27.6%ありました。定年による「年収の壁」の高さは人それぞれですが、雇用形態の変更と役職がなくなることが重なると、定年を境に7割減ということも。
そんなとき、健一さんは取引先の銀行が主催する資産運用セミナーに参加します。そこで熱心に説明されたのが、2024年から始まった新NISA(少額投資非課税制度)でした。「老後資金2,000万円不足問題」が叫ばれてから「貯蓄から投資へ」という言葉が浸透していましたが、それは現役世代だけのことと思っていました。しかし、定年後の資産運用も大切だと知らされたのです。
「銀行に預けているだけではお金は増えない。物価高のなかではむしろ目減りしてしまう可能性が高い。定年後であっても資産運用は必須である――目からうろこでした」
ちょうど、新NISAがスタートするといって、世間でも大きな注目を集めていたとき。それまで資産運用といえば貯金以外したことはありませんでしたが、セミナーに参加したのを機に投資に挑戦する気になったのです。帰宅後、妻の幸子さん(60歳・仮名)にセミナーの話をすると、「難しそうだけど、あなたが良いと思うなら。老後のこと、よろしくお願いしますね」と、特に反対はされませんでした。これまで山田家において、ここぞというときは健一さんが決断してきました。そのため、今回も特に何も言われなかったようです。