「お子さんの将来のために、学資保険はいかがですか?」「もしもの入院に備えて、医療保険は必須ですよ」子どもが生まれると、家族や保険の担当者から、保険に関するさまざまなアドバイスが寄せられます。しかし、物価上昇や金利の変動など、先行きの見えない現代において、かつての「常識」は必ずしも最適解とは限りません。本記事では、子どもが生まれたら一度は検討する3つの保険(学資保険、医療保険、自転車保険)について、本当に必要なのか、よりよい選択肢はないのか、探っていきます。
まさか、うちの子が加害者に…小学6年生、サッカー帰りの事故で普通の暮らしが一変。家族の悲劇を避ける「月々たった数百円」の保険 (※写真はイメージです/PIXTA)

両親から勧められた「学資保険」

長男が生まれたばかりのAさん夫婦(30代)。両親から「私たちがあなたたちにしてあげたように」と学資保険を強く勧められました。「元本割れしないし、大学入学時にまとまったお金がもらえるなら安心か……」と契約しかけましたが、ふと返戻率(払った保険料総額に対して、最終的にいくら戻ってくるかを示す割合)を計算して愕然。18年間でわずか103%、ほとんど増えないことがわかったのです。

 

学資保険だけが教育費への備えではない

学資保険は、教育資金の貯蓄機能に、親に万が一のことがあった場合の保険料免除などの「保障」を組み合わせた商品です。しかし、現在の低金利下では、貯蓄としての魅力はほとんどありません。インフレ(物価上昇)を考慮すると、実質的な価値が目減りする元本割れのリスクすらあります。

 

教育資金の準備という貯蓄・資産形成が目的なら、保険ではなく投資を検討してみましょう。2023年末で新規受付を終了した「ジュニアNISA」も、この考え方に基づく制度でした。

 

2024年から始まった新しいNISA制度(つみたて投資枠)を親名義で活用し、子どもの教育資金として全世界株式のインデックスファンドなどを毎月コツコツ積み立てるほうが、長期的にはるかに高いリターンが期待できます。「保障」と「貯蓄」は切り離し、貯蓄はNISA、万が一の保障は割安な掛け捨ての死亡保険(収入保障保険など)で備えるのが、現代の合理的な戦略です。

子どものうちに「医療保険」は必要か?

Bさん(30代)の2歳の娘が、RSウイルスで5日間入院。加入していた共済の担当者に連絡すると「お見舞金が出ますよ」といわれました。しかし、退院時の会計で渡された請求書をみて驚きます。医療費の自己負担額はゼロ。自治体の「乳幼児医療費助成制度」のおかげで、窓口での支払いはありませんでした。結局、共済から受け取ったのは、差額ベッド代にも満たないお見舞い金だけ。「毎月払っていた掛金は、本当に必要だったのだろうか……」と複雑な気持ちになりました。

 

社会保障制度で十分備えられるが、別の意味での「お守り」にも

日本には、非常に手厚い子どもの公的医療保障制度があります。多くの自治体では「子ども医療費助成制度」が設けられており、保険診療にかかる医療費の自己負担分が、無料か、数百円程度の少額で済みます。

※対象年齢や所得制限は自治体により異なります。お住まいの市区町村にご確認ください。

 

つまり、子どもが入院や手術をしても、高額な医療費がかかる心配はほとんどありません。民間の医療保険や共済は、この公的保障でカバーできない差額ベッド代や食事代、付き添いの親の交通費などに備えるものですが、そのために毎月数千円の保険料を払い続けるのが合理的かは、慎重に考える必要があります。

 

一方で、幼いうちから保険に加入しておくことにはメリットもあります。一番のメリットは、将来の保障を有利な条件で確保できる「既得権」を得られることです。生命保険の大原則として、保険は健康な人でなければ加入できません。もし病気やケガをしてから加入しようとすると、

 

・特定の病気は保障の対象外になるなどの条件が付く

・保険料が通常より割高になる

・最悪の場合、加入自体を断られる

 

といったケースがあります。つまり「既得権」とは、「健康ないまのうちに保険の加入審査をパスしておくことで、将来、たとえ健康状態が変わっても、加入時のいい条件のまま保障を持ち続けられる権利」を指します。子どもが健康なうちに保険に入っておくことは、将来どんな健康状態になっても困らないための、いわゆる「お守り」を親が子どもに持たせてあげることです。ただし、既得権は当然同じ保険会社でしか通じませんので、この場合、子どもは将来的に親から保険を受け継ぐこと(社会人になったら自ら保険料を払うこと)を前提としています。