(※写真はイメージです/PIXTA)
微妙に想定と異なるサ高住での暮らし
いざサービス付き高齢者住宅での暮らしが始まると、想定していたものと微妙に違う生活が待っていました。まずは食事です。館内調理で温もりのある家庭料理を提供しているという謳い文句を疑うことなく入居したものの、日によって当たり外れが。ある日のハンバーグはどうも冷凍食品を湯煎したようにしか思えず、Aさんの口には合いません。
さらに頭を悩ませたのが、ほかの入居者との人間関係です。ときどき食堂で会話を交わすようになった男性入居者のCさん。最初は気さくに話しているだけだったのですが、Aさんが離婚歴のあることをうっかりCさんに話してしまったその日から態度に少しずつ変化が。Cさんにもどうも離婚歴があるようで、男女の関係を想起させるような馴れ馴れしい言葉遣いが増えていきます。二人で話をはじめると、なにを勘違いしているのか、若かりしころの武勇伝ともとれるような話が延々と続き、話を終わらせてくれません。
Aさんにとってはまったく関心のないことで、ただひたすらに苦痛な時間が流れます。頻繁に起こることでもなく、普段は紳士のため、特に大きな問題に発展することはないのです。しかし、ふとしたタイミングでCさんからの視線を感じることで、段々と施設での居心地が悪くなってしまいました。たとえ小さな不満であっても、日々積み重なっていくことに心のモヤモヤは広がります。
高級老人ホームで暮らす友人に相談してみると…
そんな悩みを仲良しのDさんに相談してみました。DさんはAさんの入所と同じ時期に有料老人ホームでの新生活を始めていたのです。Dさんが暮らすのは、Aさんの入居する施設と比較すると高額の部類に入ります。入居一時金は2,500万円、月々の費用は25万円と、いわゆる高級老人ホームです。
Dさん曰く、食事は広告どおりの満足度で食べすぎに注意しないといけないほど美味しく、また入居者同士の機微にも、スタッフが巧に当たり障りのないよう、配慮して対応してくれているため、安心を感じるとのこと。Dさんも人生背景としては、Aさんと似た部分があるのですが、終の棲家選びの予算の考え方に違いがありました。
彼女は、人生の最後を思い残すことなく、自分らしく過ごそうと考えていました。大変丁寧に人生の収支計画、ライフプランニングの分析を行い、100歳程度までであれば十分年金と預貯金の取り崩しで暮らしていけることをあらかじめ把握していたのです。そのうえで最も満足できる施設として選んだ高級老人ホーム。
「私が頑張って働いてきたんだから、自分の時間を大切にして、使い切ってあの世に行きたいわね」そんなDさんの一言に、Aさんはハッとしました。子どもたちに多く遺すことより、自分の人生を自分らしく生きること。そのためにお金を使うのは決して贅沢ではなく、自分の人生そのものなのだと意を決しました。