共有名義の不動産を担保にする場合の注意点
相続などが原因で、1つの不動産が複数人の共有状態となっているケースは珍しくありません。このような場合に自分の持分に担保権を設定できるのか、担保として利用する場合の注意点を解説します。
自分の持分だけに抵当権を設定できるが、制約も多い
共有名義の不動産であっても、自分が所有する持分部分に限定して抵当権を設定することは法律上可能です。この際、他の持分権者の同意を得る必要はありません。
しかし、持分にのみ抵当権を設定する場合には取り扱える金融機関がかなり限られます。これは、抵当権を実行して持分を売却する際、その物件が共有状態のままだと買主を見つけにくくなることから、資産としての流動性が低いと判断されるためです。
また、仮に金融機関が担保としての取り扱いを認めたとしても、他の共有者との間で、将来的に不動産の売却や管理に関してトラブルに発展してしまう可能性もあります。
そのため、共有の土地の持分を担保とする場合には、事前に他の共有者に対して十分に説明を行い、可能であれば書面による同意を得ておくなど、共有者間での合意形成に努めることが望ましいといえるでしょう。
自分以外の持分に抵当権を設定するためには同意が必要
共有名義の不動産において、他の共有者の持分に抵当権を設定するには、その共有者本人の同意が必要です。各自の持分はそれぞれの持分権者に帰属しているため、たとえ共有の不動産であっても、他人の持分を自由に利用・処分することは許されないからです。
したがって、本コラムで紹介した「家族名義の不動産を担保にする場合」と同様に、まずはその共有者に丁寧な説明を行い、書面による同意を得る必要があります。
共有名義の不動産では持分の評価額が低くなる可能性がある
共有名義の不動産を担保として供与する場合、単独名義の不動産と比較して、金融機関からの担保評価額が低くなります。これは、共有不動産の持分だけでは市場での流動性が低く、担保として十分に機能しない可能性が考えられるからです。
こうした背景を理解したうえで、共有名義の不動産を担保に利用する場合は、融資金額に対して現実的な期待値を持つことが重要です。事前に金融機関に相談し、持分の評価や融資可能額を確認しておくと安心です。
