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不動産担保ローンでは、自分で所有している不動産だけでなく、家族名義の不動産でも担保とすることは可能な場合があります。ただし、物上保証人として許容される「家族」の範囲や融資条件は金融機関によって異なるほか、名義人の同意など法的な手続きが必要となるため慎重な判断が必要です。本コラムでは、不動産担保ローンにおいて家族名義の不動産を担保として利用する場合の注意点や、手続きの流れ、共有名義の不動産を担保とする場合の注意点を詳しく解説します。

家族名義の不動産で不動産担保ローンを利用することは可能

一定の条件を満たしていれば、家族名義の不動産でも担保として利用することが可能です。家族の範囲がどこまで認められるかは金融機関によって異なります。一般的に金融機関から求められる条件は、次の2点です。

 

・不動産の名義人が担保提供に同意していること

・親族名義の不動産であること(一般的に2親等もしくは3親等以内)

 

まず、家族名義の不動産を担保ローンに利用するためには、その不動産の名義人の同意が必要です。この同意は金融機関等の契約により求められるだけではなく、法律上の要件でもあります。

 

次に、家族名義の不動産を担保ローンに利用する際、金融機関は担保提供者との関係性を重視し、不動産の名義人が債務者(ローンを借りる人)の2親等もしくは3親等以内であることを要件とする場合が多くみられます。また、配偶者の親族のことを「婚族」といい、この場合も一定の範囲で担保提供が認められることがあります。なお、配偶者は親等で数えず、あえていえば「0親等」となります。

 

・1親等:父、母、子ども

・2親等:祖父母、孫、兄弟姉妹

・3親等:曽祖父母、曾孫、甥・姪、叔父・叔母

・姻族:夫の両親や兄弟・姉妹、妻の両親や兄弟・姉妹

 

担保提供ができる親族の範囲や必要書類などの条件については、金融機関によって取り扱いが異なるため、事前に金融機関に相談するようにしましょう。

家族名義の不動産を担保にする際の注意点

(画像:PIXTA)
(画像:PIXTA)

 

家族名義の不動産を担保にすることは可能ですが、不動産は高額な資産であるため、いくつか注意しなければならない点があります。

 

以下からは、家族名義の不動産を担保にする際の注意点を5つ紹介します。

 

名義人(不動産の所有者)の同意と物上保証人としての契約が必要

家族名義の不動産を担保として利用する際には、必ず、その不動産の名義人本人による明確な同意が不可欠となります。これは、不動産という重要な財産に担保権を設定することになるため、法律上、所有者の意思確認が厳格に求められているためです。

 

さらに、不動産の名義人は金融機関との間で、「物上保証人」として保証契約を締結する必要があります。

 

万が一、名義人の同意がないまま手続きを進めると、契約自体が無効となるだけではなく、名義人との間で法的トラブルに発展する可能性が非常に高くなります。そのため、まずは名義人に丁寧に説明をし、理解と同意を得たうえで手続きを進めることが重要です。

 

案件内容や金融機関によって判断が異なることがある

家族名義の不動産を担保とする場合、その融資可否は、金融機関の基準や個別の案件内容によって大きく異なることがあります。

 

例えば、ある金融機関では担保として認められる不動産でも、別の金融機関では認められないケースもあります。また、担保となる不動産の条件だけでなく、物上保証人となる名義人の年齢や健康状態、さらには、名義人が将来亡くなった場合の法定相続人が誰になるのかなど、さまざまな事情が審査に影響を与えることもあります。

 

このように、不動産担保ローンは画一的なルールで進むものではなく、担保とする不動産や金融機関ごとの考え方によって対応が変わることがあるため、必ず事前に金融機関に詳細を確認し、必要な書類や条件を把握しておくことが大切です。

 

金融機関による慎重な担保評価が行われる

一般的に不動産担保ローンでは高額な資金を長期間にわたって借り入れるため、金融機関による審査も非常に厳格なものとなります。

 

前述した、名義人による同意の有無や、担保となる不動産にどれくらいの価値があるのかなどを慎重に評価します。万が一ローンが返済されなくなった場合に、その物件を売却して資金を回収できるかどうかの重要な指標となるためです。

 

様々な視点から金融機関はリスクを判断するため、準備不足や情報の食い違いがあると、融資を断られる可能性もあります。

 

名義人が高齢または判断能力に不安がある場合は注意

担保として提供する不動産の名義人が高齢である場合や、認知症などが原因で判断能力に不安がある場合には、特に慎重な対応が求められます。

 

これは、判断能力が低下しているときに行った同意や契約は、後に無効と判断されてしまうことがあります。このような場合には、成年後見制度の利用など、法的な代理人を立てる手続きが必要となります。

 

成年後見制度の利用には時間と費用を要するため、名義人が高齢である場合や判断能力に不安がある場合には、事前に弁護士や司法書士に相談し、適切な手続きについてアドバイスを受けるようにしましょう。

 

相続登記が未了の場合は事前に手続きが必要

担保として提供する不動産の名義人がすでに亡くなっており、その不動産の相続登記が済んでいない場合には、先に相続登記の手続きを済ませる必要があります。

 

相続登記とは、亡くなった方から相続人へ不動産の所有権を移転させるための法的な手続きのことで、この手続きを完了させることで、初めて現在の名義人(相続人)がその不動産を担保として提供できるようになります。

 

相続登記の手続きには、戸籍謄本や遺産分割協議書など複数の書類を準備する必要があり、時間を要するため、早めに弁護士や司法書士に相談しましょう。

 

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