〈本記事の登場人物〉

■永島 亜紀さん(51歳・女性)

身長149cm。残業続きで多忙な日々を送っている。食べすぎや飲みすぎの習慣がないにもかかわらず、肥満・脂肪肝専門外来「スマート外来」を受診したところ「脂肪肝炎(MASH:代謝機能障害関連脂肪肝炎)」だと診断された。筋肉のためタンパク質を摂取することの次に医師が勧めたのは、「腸活」。肝臓と腸の関係とは……?

便秘を改善すれば「肝臓が健康になる」不思議

「さて亜紀さん。筋肉が増えれば、肝臓の脂肪化を食い止められます。その上で、次の柱を築きましょう」

「柱?」

「はい。それが便通の改善です」

「便秘の自覚はあります。ただ、この1カ月はいつもよりいいかもしれません。便秘が改善すれば、その分体重も減りそうですね」

「便が出ずに腸内にとどまっていると、どうなるかわかりますか?」

「体重が減らない?」

「もちろん、それもあるでしょう。便が腸内にとどまっていると、必要以上に栄養を吸収し続けるので太りやすくなります。さらに怖いのは、便が出ないと腸内に毒性物質が増えます。それが腸管のバリアを超えて血中に溶け込み、その毒にまみれた血液が全身を巡る可能性があります」

「えっ? それはとても怖いです」

「そうですね。でも、そうならないように毒を無毒化するのが『肝臓』です。便秘がある限り、肝臓は働き続ければなりません。それでなくても脂肪という侵入者に不法占拠されている状態で解毒作業が増え続ければ、肝臓がお手上げになるのは時間の問題です」

「……そうなんですね」

「事実、肝硬変の人には腸内の悪玉菌が多いことが知られています。だから、食物繊維は大切です。便のカサを増やし、腸内の有用菌のエサになって腸内環境を改善するのに役立ちます。穀類や野菜、きのこ、海藻を食べましょう」

「はい」

「それから、有用な菌自体を摂るのも有効です。ヨーグルトや酒粕に含まれる『乳酸菌』、納豆に含まれる『納豆菌』、みそやぬか漬けに含まれる『ビフィズス菌』などが有名です」

「発酵食品が腸活になるという話はよく聞きます」

「はい。そして、腸活は、そのまま肝活になるということですね」

「……なるほど」

「運動にも便秘改善効果があります。スクワットは腸を刺激する動きでもあるので、便秘改善効果も期待できますね」

「スクワットは偉大ですね!」

便秘をあまり気にしていなかったけれど、血液が毒まみれになるとは衝撃的だった。それを解毒する肝臓にしっかり働ける環境を整えなければいけないと実感した。

〈先生からの処方箋〉

たまった便の毒は肝臓が解毒している。「腸活」は、そのまま「肝活」になる。