(※写真はイメージです/PIXTA)
開かずの間に並んでいたもの
実家には、1階北向きの日当たりの悪い、いまでは使われていない四畳半の部屋があります。Aさんと妹はこの部屋を「開かずの間」と呼んでいました。鍵などはかけてはいませんが、怖くて開けられないのです。
そこには、亡くなった父が作った木彫りの仏像が10体以上も並んでいたのでした。小さなものでも30cm、大きなものは2m近くもある大作です。昔、部屋に入ったときは、この大きな仏像が灯りの下、ゆらゆら揺れる2メートル級の大男の人影にみえて腰を抜かしそうになったこともありました。
母親は平気で部屋に出入りしていたようですが、姉妹2人は気持ち悪くて仕方がありません。母親に「なんとかしてよ」といっても「お父さんが魂を込めて作ったものなのに簡単に捨てられませんよ」と返され、10年間そのままになっていました。
「父親は生前、いきなり仏像を作りはじめて、亡くなる直前まであの部屋で作業をしていました。作りはじめた理由などは聞いていませんが、『念』みたいなものを感じてしまって、私たち姉妹は怖くてダメですね。父親が作った仏像は目が怖いんですよ。それでも始末しないと家を他人には貸せないので困っています」
この仏像の価値はどれほどかというと、あくまでも素人の趣味程度の出来。似てはいませんが、イメージとしては「円空仏(えんくさん)」のような粗削りの木彫りのもので、とても売れるような価値などはありません。万が一でも欲しい人がいれば、譲り渡せるのでしょうが、そういった人を探すのも大変ですし、フリマに並べる勇気もありません。
予期せぬ相続品をどうするか?
相続財産の中には予期せぬものが入っている場合があります。たとえば、古い刀剣や海外のお面、古い日本人形やビスクドールなど、まるでホラー映画に出てくるような遺品など。こういったものは「呪物」ともいわれ、忌み嫌われることもあります。
しかし、価値があればしっかりと相続税の対象となります。売却できれば売却すればいいのですが、Aさんのように売却できないものもあるでしょう。素人が作ったものでも、宗教的・精神的な意味を持つ品は、丁寧な扱いをしないと気持ちが悪いと感じるものもあるかもしれません。特に仏像の場合は、「魂が宿っている」とされることも多いため、処分前に「閉眼供養(へいがんくよう)」を行うのが一般的とされています。閉眼供養とは魂抜きともいわれ、仏像のほかにも仏壇やお墓、位牌や人形など、処分の前に行う供養のことです。一般的には、菩提寺や近隣のお寺に依頼して読経をしてもらいます。その後、お焚き上げで丁寧に焼却してもらいます。
費用としては、寺院によって違いますが、閉眼供養で1体3万〜5万円程度、お焚き上げで5,000円~1万円が相場のようです。事前にご確認ください。なお、仏具店や葬儀社でも引き取り・供養サービスを提供していることも。また、閉眼供養を済ませた仏像等は、単なる物品として扱えるため、自治体のルールに従って処分可能となる場合もあります。「供養証明書」といったものが必要な場合もありますので、必ず処分前に自治体へ確認しましょう。