年金生活がスタートするとき、誰もが一通の通知書に向き合うことになります。長年働き続けてきた日々の先に待つ年金額を前に、私たちは何を感じ、どう備えていくべきなのでしょうか。
日本年金機構から届いた「年金決定通知書」に65歳男性「これでどう生きていけと」…40年を超える会社員人生でも、思わず絶句する「残酷な年金額」 (※写真はイメージです/PIXTA)

年金だけで暮らすのは難しい…日本の高齢者の現実

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金保険(第1号) 受給者の平均年金額は14万7,360円。また65歳以上の受給権者(男性1,018万人)に限ると、月16万9,484円。田中さんが手にする年金額は、ちょうど平均に近い金額です。

 

一方、総務省『家計調査 家計収支編(2023年)』によると、高齢者夫婦(ともに65歳以上/無職)の1ヵ月支出は平均25万6,521円。対し、実収入は25万2,818円で、そのうち年金は22万4,186円。老後の収入は年金だけ、というケースでは、月3万円ほど取り崩しが必要になる――これが日本の高齢者の平均です。

 

1歳下の妻とふたり暮らしだというた田中さんの場合、現在の収入は田中さんの年金だけで月16.8万円。あと1年すると、夫婦で年金を受け取るようになりますが、合計月27万円ほどになるとか。額面では足りている=年金だけで暮らすことができる、ようにみえますが、実際の年金額は月23万円ほどとなり、平均的な生活を送るとなると月2.5万円ほど取り崩す必要があります。1年で30万円、10年で300万円、20年で600万円、30年で……長生きすればするほど、取り崩しが増えるという、喜んでいいのか、それとも悲しむべきか、よくわからない状況に陥ってしまうわけです。

 

さらに実際の年金額は、物価や賃金などの状況によって毎年改定されます。今年は1.9%の引き上げとなったものの、物価上昇率2.3%を下回り、実質目減りとなりました。年金生活者は物価上昇を前に窮地に立たされる……そんな老後が続きます。

 

現実に直面し、当初、完全に仕事から引退することにした田中さんでしたが、今はスポットバイトをして、足りない分は補填しようかと検討中だといいます。

 

「年金を増やしてくれ、といっても今の日本じゃ無理ですよね……自分で何とかするしかありません」

 

[参考資料]

厚生労働省『令和5年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

総務省『家計調査 家計収支編(2023年)』