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平均年収の会社員がたどり着いた「年金に手を付けない」生活
「先月も結局、年金は手つかずのままです」
佐藤隆さん(67歳・仮名)。スマートフォンのネットバンキング画面には、偶数月に年金が振り込まれていることだけが記録されています。つまり年金を引き出すことなく、残金が増え続けているということ。65歳から年金受給が始まりましたが、その年金は一度も使ったことがないといいます。
佐藤さんの現役時代は、決して派手なものではありませんでした。大学卒業後、中堅の食品メーカーに就職。定年まで勤め上げましたが、役員になることもなく、最終役職は課長止まり。年収も同年代の平均的な水準で推移していたと言います。
しかし、年金に頼らず暮らしていけるというのは、今の時代、まさに「勝ち組」。その勝因は節約と貯金ではなく、現役時代に取り組んだ「攻めと守りの株式投資」にあったといいます。
「投資を始めたのは2000年頃です。当時はITバブル崩壊で相場は最悪でしたが、私は逆にチャンスだと思いました。手元にあった500万円を元手に、割安に放置されている『バリュー株』を買い漁ったんです。みんなが怖がっているときこそ、安く買える。色々と株式関連の書籍を読み漁り、これは商売の基本と同じだと思ったんですよね」
佐藤さんが大きく資産を増やしたのは、2003年から2005年にかけての相場上昇期でした。当時、底値圏にあった不動産関連株に目をつけ、集中的に投資したのです。
「会社の決算書を読み込むのが趣味で、当時、不動産業界は不況で沈んでいましたが、財務内容が良く、どう考えても株価が安すぎる銘柄がいくつもあった。そこに資金を集中させました。少しだけ信用取引も活用してレバレッジを効かせた結果、数年で資産は数千万円に膨れ上がりました。普通のサラリーマンが、給料以外でこれだけの利益を得られたのは衝撃でしたよ」
しかし、順風満帆ではありませんでした。2008年のリーマン・ショックでは、資産が一時半分近くまで落ち込む恐怖も味わいました。
「あのときは、本当に震えましたよ。でも、過去の経験から『投げ売りしたら終わりだ』と自分に言い聞かせました。そこで投資スタイルを変えて、配当金を重視する守りの投資に変えたんです」
アベノミクスが始まる2012年頃には、不況に強いドラッグストアや食品株、高配当な通信株などにポートフォリオを組み替えていました。株価の上昇とともに資産は1億円近くまで回復し、現在はそこから生み出される配当金だけで、日々の生活費のほとんどを賄っています。
「今の生活費は夫婦で月15万円ほど。決して贅沢はせず、配当金だけで質素に暮らしています。ただ年金に頼ることのない生活は、精神的にすごく楽ですね。現役時代、同僚が飲み歩いている間に株式の勉強をとことんした……それが、今の余裕に繋がっているのだと思います」