(※写真はイメージです/PIXTA)

民泊新法の施行やインバウンド需要の高まりとともに近年注目を集めている民泊事業ですが、法令への適合や地元住民の理解など、開業にはいくつかのハードルがあります。本コラムでは、民泊を始める際に注意すべきポイントや具体的なステップ、必要な費用などを交えて詳しく解説します。

民泊を始める際の注意点

(画像:PIXTA)
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ここまで紹介したように、民泊新法により開業が容易となったことや、ニーズの高まりを受けて、民泊経営はますます注目されています。しかし、民泊経営には次に紹介するようなリスクも伴うため、慎重な判断が求められます。

 

管理規約や条例等の規制:将来的な変更も有り得る

民泊を運営する際にまず確認すべきことが、物件の管理規約や地域の条例についてです。

 

特に分譲マンションでは、管理組合が民泊利用を禁止していることや、自治体によっては条例で独自の制限を設けている場合もあります。例えば、特定エリアでは営業可能日数がさらに制限されていたり、届け出に厳しい条件が課されていたりすることがあります。

 

また、現在は民泊が禁止されていない場合でも、将来的に管理規約や条例が変更される可能性は十分にあり、常にこれらの規制に対応するのは現実的に困難です。そのため民泊を始める際には、現時点での状況はもちろんのこと、今後の規制強化や禁止リスクも織り込んだ上での非常に難しい意思決定が求められます。

 

年間の営業日数は180日まで:事業として収支が成り立つか

民泊新法に基づく民泊では、「許可」や「認定」が不要になり「届出」のみで形式的な審査を経て早期の営業が開始できる一方で、営業可能な日数が最大で年間180日までと法律で制限されており、実質的には年間の半分しか営業ができません。

 

そのため、仮に1泊あたりの宿泊単価が高くても、満室にならなかったりシーズンによる稼働率の変動を考慮したりすると、事業としての採算が合わない可能性もあります。特に、物件取得費や初期投資が高額になる都市部では、180日の制限内で収支を黒字化するには高い稼働率と精緻な運営戦略が求められます。

 

近隣住民の理解:理解を得られずに事業開始できないリスクがある

民泊の運営が規則上・法令上は問題がない物件であっても、実際の運営には地域社会の理解と協力が欠かせません。

管理会社や清掃業者を手配して運営管理を徹底したとしても、外国人観光客や短期滞在者の頻繁な出入りに対する住民側の不安や不快感を完全に解消することは難しく、苦情や反対運動につながることもあります。

そのため民泊事業を始める際には近隣への丁寧な説明と配慮を行い、信頼関係を築く努力が求められますが、それでも理解が得られない場合には開業を断念せざるを得ない可能性もあります。

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