(※写真はイメージです/PIXTA)

民泊新法の施行やインバウンド需要の高まりとともに近年注目を集めている民泊事業ですが、法令への適合や地元住民の理解など、開業にはいくつかのハードルがあります。本コラムでは、民泊を始める際に注意すべきポイントや具体的なステップ、必要な費用などを交えて詳しく解説します。

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民泊とは?

(画像:PIXTA)
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民泊とは、所有する住宅の一部または全部を他人に有償で貸し出し、宿泊サービスを提供することをいいます。民泊を始めるには、原則として行政の許可を取ったり、所定の届け出を行ったりする必要があります。許可を取らずに営業を開始してしまうと、違法民泊として刑事罰の対象にもなるため、必ず許可を得てから開始するようにしましょう。

 

かつては海外からの観光客を中心としたインバウンド需要の受け皿として注目を集めましたが、近年では国内の旅行者やワーケーション利用者からも支持を集めています。民泊は一般的なホテルや旅館とは異なり、より生活感のある空間で宿泊できる点が魅力とされており、コストパフォーマンスや地域とのふれあいを求める宿泊者に好まれる傾向があります。

 

民泊の定義と種類

民泊には、旅館業法に基づく簡易宿所型の民泊、国家戦略特別区域法に基づく特区民泊、住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)に基づく民泊、の3種類があります。それぞれ根拠法令や管轄省庁が異なり、開業の条件などが異なるため注意が必要です。

これまで民泊は、簡易宿所型民泊として開業されることが一般的であったものの、フロントやスタッフの常駐が義務付けられていたり、営業開始まで数ヵ月から半年程度の時間がかかったりと、柔軟な運用が困難でした。一方で特区民泊は、フロントやスタッフの常駐が不要になったものの、国家戦略特区として指定された地域でしか開業できず、地理的な制約が設けられています。

 

そこで2018年6月に施行された民泊新法では、年間180日以内という営業日数制限が設けられているものの、住宅宿泊事業者として届出を行うだけで全国どこでも開業できることとなり、民泊開業の負担が大幅に軽減されました。

 

また、民泊を開業するにあたり、簡易宿所型民泊では行政による審査を経た「認可」が、特区民泊では認可とほぼ同様の「認定」が必要ですが、民泊新法に基づく民泊では「届出」で足りることとなりました。これにより、届出後に自治体による書類審査や現地確認が行われることがありますが、要件を満たして必要な書類を提出することで早期に民泊を開業できるようになりました。

 

インバウンド需要の高まりと民泊市場の動向

民泊は外国人観光客からの人気が高いため、民泊を始める際にはインバウンド需要を把握することが欠かせません。

 

観光庁の調査によると、2024年の訪日外国人旅行者数は3,687万人で、過去最多を記録しました。これに伴い、民泊利用客も増加しており、2024年12月1日から2025年1月31日までの間で、41万7,662人(前年同期比157.6%)が民泊に宿泊し、そのうち、日本人が15万9,534人(前年同期比118.0%)、外国人が25万8,128人(前年同期比198.9%)でした。

 

出典:観光庁「訪日外国人旅行者数・出国日本人数(2025年1月21日)」(https://www.mlit.go.jp/kankocho/tokei_hakusyo/shutsunyukokushasu.html)及び観光庁「住宅宿泊事業の宿泊実績について(2025年3月28日)」(https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/business/host/content/001891326.pdf

 

また、日本政府は2030年までに年間6,000万人のインバウンド観光客を誘致することを目標に掲げており、観光客の増加に伴う宿泊施設の不足が課題の一つとして掲げられています。

 

このように、インバウンド観光客の総数や、民泊に対するニーズは今後さらに高まることが予想されており、民泊はインバウンドビジネスとしても注目を集めています。

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