(※写真はイメージです/PIXTA)

転勤や海外赴任などで長期間自宅を離れる場合や物件を相続した場合など、所有しているのに活用できていない不動産があるという場合には、その家を貸し出すという選択肢もあります。ただし、賃貸経営を行うにあたっては住宅ローンの扱いや確定申告など、注意すべき点がいくつかあります。本コラムでは、個人が家を貸し出すことのメリットやデメリット、具体的な手続きのほか、注意点についても詳しく解説します。

家を貸すことのデメリット・注意点

ここでは、家を貸す前に知っておくべきリスクや注意点について詳しく解説します。不動産投資をしたことがない人にとっては、契約内容や法律、税制面での誤解が思わぬトラブルや損失を招くこともあるため、注意が必要です。

 

管理の手間がかかる

家を貸すことによって、入居者との賃貸契約や家賃の回収、建物の修繕、設備の点検など、さまざまな管理業務を行う必要が生じます。

 

このような手間を軽減するためには、不動産管理会社へ管理業務を委託するのが一般的ですが、その分の管理手数料が発生します。そのため、家賃収入だけをみて収益性を判断するのではなく、こうした管理手数料など費用を差し引いた実際の収支を把握し、綿密なシミュレーションを行いましょう。

 

物件を自由に利用することが難しくなる

家を貸している間は、自宅ではなく賃貸物件になります。当然ながら自分自身がその家に住むことはできません。法律では賃借人の地位が厚く保護されているため、賃貸人から一方的に契約を解除することは非常に困難であり、貸し出し中に「やっぱり自分で住みたい」という状況になってもすぐに対応できない可能性が高いです。

 

入居者がいる状態で物件を売却することを「オーナーチェンジ」といいますが、不動産売買においては、入居者がいることで自己居住用の物件としては基本的に敬遠されやすくなります。空室物件であれば、自己居住用としても投資用としても購入希望者が現れる可能性がありますが、入居者がいることで投資用の物件を探している人に購入希望者が限定され、空室物件よりも売れにくくなる場合があります。

 

オーナーチェンジで物件を売却する方法や、メリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

 

【関連記事】オーナーチェンジでの物件の売却!買い取り業者の選び方や注意点は?

 

入居者が決まらない可能性や入居者トラブルのリスクがある

いざ物件を貸し出そうと思っても、すぐに入居者が決まるとは限らず、空室となり賃貸収入を得られない期間が発生する可能性もあります。空室の間は家賃収入を得られず、維持管理のコストだけがかかるため、収益が不安定になるリスクを考慮しなければなりません。

 

また入居者が決まった後も、家賃の滞納や近隣住民とのトラブル、設備の破損、無断退去・無断転貸など、さまざまな問題が発生することを見越してリスクに備えることが重要です。こうしたトラブルを未然に防ぐために、入居者の審査を厳格に行い、不動産管理会社に対応を任せることも検討しましょう。

 

住宅ローンを組んでいると貸し出せない可能性がある

住宅ローンを利用して購入した物件は、原則として第三者に貸し出すことはできません。住宅ローンはあくまで契約者本人やその家族が居住することを目的とした融資になります。

 

金融機関の許可を得ずに賃貸物件として貸し出すと、契約違反とみなされて、ローン残額の一括返済を求められ、さらには個人信用情報機関に異動情報が登録され、その後の金融取引にネガティブな影響が出ることもあります。

 

ただし、住宅ローンを利用しているからといって、絶対に貸し出しに応じてもらえないというわけではないため、まずは金融機関に事情を説明し、許可を得られるか確認してみましょう。

 

税制優遇を受けられなくなる

家を貸すことで税制優遇が受けられなくなる点にも注意が必要です。

 

例えば住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、原則として自ら居住することが要件となっており、賃貸に出してしまうと控除の対象外となります。銀行から許可を得て住宅ローンを継続したまま家を貸すことができたとしても、住宅ローン控除の利用はできなくなります。

 

また、家を売却する際に適用される「3,000万円の特別控除」についても、適用条件が細かく定められており、賃貸に出していた場合はこの控除が使えない可能性があります。

 

ただし、「自分が所有者として住んでいた」物件を、「自分が住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までにその家屋を売るか、家屋とともにその敷地等を売る」というケースでは、その間に別の住宅を取得して居住していないなどのいくつかの条件はありますが、例外的に特例の適用が可能な場合もあります。

 

こうした税制の扱いは非常に複雑なため、事前に税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

次ページ家を貸すために必要な6つのステップ