「貧困」と聞くと、食べるものにも困るような状況を思い浮かべるかもしれません。それは「絶対的貧困」と呼ばれ、生命の維持さえ困難な状態を指します。しかし現代の日本で深刻化しているのは、それとは異なる「相対的貧困」です。本記事では長岡FP事務所代表の長岡理知氏が、Nさんの事例とともに、隠れ貧困の実態に迫ります。※相談者の了承を得て、記事化。個人の特定を防ぐため、相談内容は一部脚色しています。
(※画像はイメージです/PIXTA)
時代とともに変わった「自宅」の価値
事例のNさんの場合は、自宅の市場価値が高いため、決断さえできれば深刻な貧困を避けることができます。しかしこれが地方在住の方の場合はどうでしょうか。
特に地方在住の富裕層の方の場合は、自宅の土地に高い価値がないことが多いでしょう。豪邸になればなるほど売れないのが地方の現実です。事例では子供世代が実家を欲しがっていましたが、地方では子供世代はもらわないように必死に避けるものです。まさに自宅が負の遺産となっているのです。
ハウスリッチ・キャッシュプアの状態は、高齢者だけではなく、現役世代にも顕著です。高額な住宅ローンを借りて自宅を購入したものの、現金での貯蓄がない状態では、家計のキャッシュフローはいずれ破綻するでしょう。定年退職時に貯蓄よりも負債が多い状態で、市場価値の低い物件を所有している場合は、高確率で相対的貧困に陥っていきます。
人口が減少していく日本社会では、たとえ高所得者であっても、自宅を所有すべきかどうかは専門家による家計診断を受けて判断することをお勧めします。
長岡理知
長岡FP事務所
代表