「亡くなった人の年金の4分の3」といったイメージが広がっている遺族年金。実際には受給額の計算や受給条件は非常に複雑です。遺族年金には基礎年金と厚生年金があり、受け取れる金額は加入歴や年齢、そして自分自身の年金の有無など、さまざまな要素によって大きく変わります。
遺族年金は「亡夫の年金の4分の3」と聞いたのに…〈年金月27万円〉72歳夫を亡くした66歳妻、年金事務所で告げられた「信じがたい金額」に絶句 (※写真はイメージです/PIXTA)

月20万円のはずが「月2万円」の衝撃

最愛の夫、和夫さん(享年72歳・仮名)を亡くした田中聡子さん(66歳・仮名)。1年前に体調を崩し、そのまま入院。「このまま一度も自宅に戻れなくなるなんて、夢にも思っていなかった」というようにまさかの連続で、怒涛の日々を過ごしていました。亡くなる3ヵ月くらい前には「もう無理かもしれない」と、どこかで諦めていました。そして和夫さんが旅立って、もう数ヵ月。どこか実感がわかず、無気力の状態が続いているといいます。

 

そんな聡子さんを心配し、励ましてくれていたのが、高校時代からの友人たち。そのなかには聡子さんと同じように、パートナーとの別れを経験している人も。ひとり残され、不安しかないこれからに対して、具体的なアドバイスをいろいろとしてくれます。そのなかのひとつが年金でした。

 

「きちんと年金の手続きは済ませておいたほうがいいよ。遺族年金、もらえるはずだから」

 

一家の大黒柱がなくなったとき、残された遺族に対する社会保障である遺族年金。言葉は聞いたことがあっても、申請の方法や、実際にいくらもらえるかは見当もつきませんが、「亡くなった旦那の年金の4分の3は受け取れるはず」と友人はいいます。

 

和夫さんは70歳まで繰下げをして、42%ほど受給額がアップ。月27万円の年金を手にしていました。その4分の3ということは、月20万円ほど受け取れる計算――漠然とした不安に包まれるなか、月20万円受け取れるのはありがたいこと。早速、年金事務所に手続きしに訪れることにした聡子さん。しかしそこで思いがけない事態に直面します。

 

それはおおよその支給額を聞いたときのこと。「田中さんは……月2万円ほど受け取れるかと思いますよ」と、窓口担当者。「えっ、2万円? 一桁間違えていませんか?」と、少々うろたえ気味の聡子さん。しかし、何度聞こうと「遺族年金は月2万円」という事実は変わりません。想定外の出来事に聡子さん、言葉を失くし、ただ茫然と立ち尽くしてしまったといいます。