“終の棲家”として、老人ホームへの入居を検討している人が増えています。その理由はさまざまですが、「娘の暮らしぶり」が原因で入居を検討するケースもあるようで……。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、70代夫婦の事例をもとに「高齢夫婦とその子ども」に潜む問題点と老人ホーム入居時の注意点について解説します。

実家を売ろうと思う…年金月27万円・貯金3,000万円の70代夫婦が「老人ホーム」への入居を決意。きっかけは“親大好き”な41歳・出戻り娘の存在【FPの助言】
実家暮らしの未婚者が増加している日本
近年、生活様式や働き方の多様化を背景に、親と同居している未婚者が増加しています。総務省の「令和2年国勢調査」によると、親と同居している未婚の40代・50代は約384万人と、平成7年の約113万人と比べて3倍超です。
また、厚生労働省の「令和4年人口動態統計月報年計の概況」によると、令和4(2022)年の婚姻件数に対する離婚件数は約35%と、3組に1組が離婚している計算になります。
ただいま…41歳のひとり娘が突然「出戻り」したワケ
78歳の山田稔さん(仮名)は現在、妻の多恵さん(仮名・76歳)との2人暮らしです。65歳以降、月27万円の年金で穏やかに暮らしてきました。退職金を含めた貯金は3,000万円ほど。
そんな夫婦には、41歳のひとり娘・幹恵さん(仮名)がいます。幹恵さんは大学進学をきっかけに上京、そのまま都内で働いていました。しかし、ある日突然、実家に帰ってきたのです。
「ただいま。あたし、今日からここに住むね」
予期せぬ出来事に驚いた2人でしたが、愛する娘が帰ってきた喜びもあり、ひとまず温かく迎え入れました。居間で食卓を囲み話を聞くと、幹恵さんは夫の不倫を理由に離婚し、荷物をまとめて出てきたのだといいます。
「ようやく結婚できたと思ったらこれだもの、やっぱり私には結婚が向いてなかったのかもしれないわ。やっぱり実家が落ち着く~。……お父さんお母さん、これからは私が面倒をみるから心配しないでね」
両親は、傷心の娘に励ましの言葉をかけながらも「これからは私が面倒をみる」という言葉に感激。
「そうかそうか、おかえりなさい。まだまだ幹恵の世話にはならないつもりだが、お言葉に甘える日も来るかもしれないね」
こうして、数十年ぶりに再び3人暮らしが始まった一家でした。しかし……。