「子どもに迷惑をかけたくない」「ひとり暮らしが不安になった」「話し相手が欲しい」などの理由から、終の棲家として「老人ホーム」を検討する人が増えています。老人ホームにはさまざまな区分があり、主体とするサービスによって金額も異なるため、慎重な選択が必要です。そこで今回、老人ホームへの入居を後悔していた79歳男性の事例をもとに、失敗しない施設の選び方をみていきましょう。
老人ホームなんて入らなきゃよかった…年金月20万円の79歳男性、自宅を売って「有料老人ホーム」に入居→わずか半年後に起きた「取り返しのつかない後悔」
自宅を手放して選んだ「理想の生活」
石田耕造さん(仮名・79歳)は、80歳を前に長年住んだ自宅を売却し、老人ホームに入居する選択をしました。
子どもにも協力してもらいながら探した入居先は、設備が充実していてサービスも手厚いと評判の「自立型有料老人ホーム」です。
自宅に思い入れはありましたが、妻は3年前に他界しており、1人で生活するには広すぎました。また、相続で苦労した経験のある耕造さんは、「子どもには相続で苦労をかけたくない」という思いもあったといいます。
気に入った施設は前払金約4,000万円と高額ですが、自宅の売却代金と貯金の一部でまかなえました。また、管理・共益費が毎月約15万円かかりますが、耕造さんは月額約20万円の年金を受け取っているため問題なさそうです。
「これで子どもに迷惑をかけずに済む」
肩の荷が下りた耕造さんは、施設での余生を存分に楽しむつもりでした。
施設での生活は快適そのもの
入居当初は、大浴場やジム、レストランなどを積極的に利用していた耕造さん。
「同世代の入居者とも交流を深めたい」「ここで第二の人生を楽しみたい」
そう意気込んでいた耕造さんは、同世代の入居者たちと楽しい日々を満喫していたといいます。しかし、その思いはたった一つの出来事によって大きく覆されることになります。
「たった一度の転倒」で
入居から約半年ほど経ったある日の朝、食堂へ向かうため廊下を歩いていた耕造さんは、足を滑らせ転倒してしまいました。
起き上がれずにいるところをスタッフに発見され、病院で診察を受けた結果、足の骨折が判明。翌月には退院できましたが、耕造さんは自力での歩行が難しく「要介護状態」となってしまったのです。
自立型の老人ホームは「基本的に自立した高齢者」を前提とした環境のため、歩行介助や日常生活のサポートが必要となった耕造さんには、追加の介護サービス費用が発生します。
老人ホームを退去する必要はありませんでしたが、要介護となったために介護費用が上乗せされます。
さらに自立型ホームならではの「自由な生活」を楽しむこともできなくなり、耕造さんは日を追うごとに気持ちが沈んでいきました。