“終の棲家”として、老人ホームへの入居を検討している人が増えています。その理由はさまざまですが、「娘の暮らしぶり」が原因で入居を検討するケースもあるようで……。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、70代夫婦の事例をもとに「高齢夫婦とその子ども」に潜む問題点と老人ホーム入居時の注意点について解説します。
実家を売ろうと思う…年金月27万円・貯金3,000万円の70代夫婦が「老人ホーム」への入居を決意。きっかけは“親大好き”な41歳・出戻り娘の存在【FPの助言】
娘の“豹変”に堪忍袋の緒が切れた両親
実家に戻ってきてから数ヵ月が経っても、幹恵さんは一向に働く気配がありません。それどころか、当初は積極的に手伝っていた家事も徐々にやらなくなり、いまでは日中は自分の部屋にこもってダラダラ過ごし、夕飯を食べるとすぐにどこかへ出かけてしまいます。どうやら、夜な夜な地元の友だちと飲みに行っている様子です。
挙句の果てには、「今度、友だちと旅行行こうって話してるんだよね。5万円だけくれない?」と援助を求める始末です。
「どうしたらもう少し自立してくれるのかしら……こんなんじゃ、私たちに本当に介護が必要になったとき心配だわ」
最初は娘が戻ってきてくれただけでうれしいと思っていた両親も、ついに堪忍袋の緒が切れます。
「実家を売って、老人ホームに入ろう」
夫婦の突然の決断には、理由があります。稔さんと多恵さんは、ともに70代後半です。2人が住んでいる一戸建ては築40年以上が経過しており、老朽化が進んであちこちガタがきています。
また、現状は健康状態に問題のない2人ですが、いつケガや病気にかかり、介護が必要になるかわかりません。そのため、夫婦は幹恵さんが帰ってくる前から、“終の棲家”について話し合っていたのでした。
「荒療治になるが、ここまですれば幹恵の自立を促せるんじゃないだろうか」
こうして2人は、“終の棲家”となる老人ホームを探し始めました。
候補となる老人ホームの目星をつけたものの、ためらう2人
夫婦が目星をつけた老人ホームは、入居一時金1,500万円、月額25万円の施設です。そこには知り合いも数人入居しており安心感はあるものの、年金と預貯金だけでは不安が残ります。そこで、やはり実家を売却することで資金を確保しようと考えました。
とはいえ、せっかく帰ってきた娘を突然追い出すのは酷かもしれないと、夫婦はためらいます。
「私たちが実家を売るなんて言ったら、娘はどんな顔をするだろう」
「老人ホームに入ったあと、私たちや娘の生活に問題はないだろうか」
不安になった2人は、金銭面について助言をもらうため、知り合いのファイナンシャルプランナー(FP)に相談することにしました。