人生最大の過ちです…74歳男性の「後悔」

田口さん(仮名・74歳)は3年前、長年連れ添った妻を亡くしました。悲しみのあまりふさぎ込んでいた田口さんを、子どもたちも孫たちもひどく心配していたそうです。

そんな田口さんに、ある日変化が訪れます。田口さんを気づかった友人から「よかったら施設に来ないか?」と、高齢者施設への入居の誘いが届いたのです。

幸いなことに、田口さんにはこれまでの節約生活で築いた3,000万円の貯金がありました。老い先の年数を考えても、一人暮らしをする分なら3,000万円あれば十分でしょう。

妻との思い出がつまった自宅で数日考えた田口さんは、妻のいない自宅で暮らすことの寂しさに区切りをつけ、前を向く決心を固めました。

無人の家を残しておくと、維持管理や相続で子どもたちに迷惑がかかると考えた田口さんは、自宅を売却してそのお金で友人の施設へ入居します。

入居した当初こそ慣れない環境に戸惑っていた田口さんでしたが、友人の積極的な声かけもあり、次第に入居者とも打ち解けます。田口さんは本来の明るさを取り戻し、笑顔の絶えない充実した日々を過ごしていました。

しかし、約2年後。突如この幸せな日常が終わりを迎えます。

なんと、入居した施設が「経営不振のため運営を続けられない」と、閉鎖されることになってしまったのです。これにより、入居者たちは急きょ住まいを探す必要に駆られました。

しかし、田口さんはもう74歳、後期高齢者目前の無職男性に快く部屋を貸してくれる大家はなかなか現れません。ようやく見つかったのは、六畳一間・風呂トイレ共同の築古アパートでした。

「こんなことになるなら、あのとき家を売らなければよかった。本当に愚かでした。その結果、終の棲家がこんな何の縁もないボロアパートだなんて……笑えますよ、人生最大の過ちです」

田口さんは自嘲気味にそう話しました。