FPが夫婦の考えを“やんわり止めた”ワケ

「このままでは、本当に娘がダメになってしまいます。けれど、わが子と私たちの将来を考えると、なにが一番いい方法なのかわからず……どうすればよいでしょうか?」

夫婦から一連の話を聞いたFPは、今後について次の3つの助言を行いました。

1.娘との「本音での話し合い」を試みる

親子といえども、以心伝心とはいかないものです。そのため、たとえ言いづらくとも、ときにはしっかりと言葉にしてコミュニケーションを図らなければなりません。

稔さん夫婦は、普段から娘に叱ったり注意したりする機会があまりなく、幹恵さんもそんな優しい親に甘えている一面がありました。自宅売却の“荒療治”をする前に、まずは面と向かって「なにを不満に思っているか」「相手のなにに期待しているか」を話し合うことから始めましょう。

改めて夫婦に「娘に対する期待」について尋ねると、「最低限の収入を得て、自分の将来について考えてほしい」というものでした。

「いまはよくても、自分たちがいなくなったあとに生活できるのか」「仕事をしないままで、生活費はどうするのか」という心配が強いようです。

まずは幹恵さんが自身の将来についてどのように考えているのか、本人の考えを確認したうえで、『娘のことを心配している』ことを含めて本音を伝える必要があります。

2.現時点で「自宅を売って老人ホームに入居」はハイリスク

また、老人ホームへ入居することは選択肢の1つですが、入居期間が長くなると資産が底を尽きてしまう可能性があります。

家を売却して施設に入ると、資金が底を尽きても自宅には戻れません。また、入居した施設が期待どおりの場所であればよいですが、「こんなはずではなかった」という場合、ホームでの生活が苦痛となってしまいます。

したがって、自宅の売却は「最終手段」として、売却せずに済む施設を探すか、介護が不要な間は自宅で過ごし、介護が必要になってから入居をしたほうが金銭面では安心です。

3.「施設見学」は元気なうちに

ただし、いざ介護が必要になってからの施設探しは簡単ではありません。そのため、元気なうちに気になる老人ホームを見学しておくのはいい方法です。

また、見学時に施設の食事を試食することをおすすめします。毎日の食事が自分の好みでなければ、施設暮らしが苦痛となってしまうからです。

また、医療行為や看取りなど、対応してもらえる内容も確認しておきましょう。「寝たきりになったら他の施設へ移る必要がある」など、細かいルールや制限を設けている場合もあります。施設の種類は同じでも、対応してもらえる範囲は施設によって差があるため注意してください。