山田家の「その後」

後日、山田夫婦は幹恵さんの現状に対する率直な思いと今後の要望を冷静に述べたうえで、「いまの状況が続くのなら、実家を売ろうと思う」と伝えました。

「……なにも言われないからつい甘えてた、ごめんなさい」

反省した幹恵さんは重い腰をあげ、就職活動を始めることに。その後、正社員ではないものの、まずは派遣の仕事に就くことができました。年収は約300万円と多くはないものの、就職して働き始めた娘をみて夫婦はひと安心です。

しかし、娘の将来に対する不安はやはりゼロではないといいます。

そこで、「少しでも娘のためにお金を残してやらないと」と考えた2人は、すでに候補となっていた老人ホーム以外にも視野を広げることにしました。趣味の散歩がてら、夫婦でランチを楽しみながら毎月2~3つの施設を見学しています。

子の“出戻り”は決して他人事ではない

可愛い子どもが家に戻ってきてくれることは嬉しいことではありますが、親の経済力を頼りに自堕落な生活をされると、将来が不安になるのも無理はありません。

稔さん夫婦は、元来の性格と娘可愛さから思いを伝えられず“荒療治”を考えるに至りましたが、日頃から思っていることを伝え合うことですれ違いは軽減されます。直接親子で話すのが難しい場合は、信頼できる第三者に“潤滑油”としてあいだに入ってもらうのも選択肢のひとつです。

また、加齢とともにいつかは介護が必要になります。元気なうちに「介護保険サービス」について情報収集をしておくといいでしょう。介護については行政の窓口(高齢福祉課など)や地域包括支援センターなどを積極的に活用することをおすすめします。

武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役