(※写真はイメージです/PIXTA)
想定以上の出費…年収1,000万円では追いつかない現実
小学校、中学校、高校と、特に問題なければ、ほぼエスカレーターで一流私立大学卒の学歴を手に入れることができる――息子のために最善のことをしてあげられたという気持ちがありました。しかし、苦労の始まりはここから。
念願の名門私立小学校は、やはり費用も桁違い。入学金、制服代、指定のランドセルやカバン、タブレット端末の購入……気づけば、入学前の手続きだけで100万円を超える金額があっという間に口座から消えていきました。
「これは未来への投資――」
良介さんは、そう自分に言い聞かせます。さらに高額な授業料に加え、毎月のように徴収される教材費、施設維持費、寄付金。夏休み前には「希望者のみ」という名の、事実上ほぼ全員が参加する海外サマースクール(費用50万円~)の案内が届きました。周囲が当たり前のように申し込むなかで、「うちだけ行かせないわけにはいかない」というプレッシャーがかかります。
【公立小学校と私立小学校「年間教育費」】
学習費総額:336,265円/1,828,112円
学校教育費:81,753円/1,054,083円
学校給食費:38,405円/53,601円
学校外活動費:216,107円/720,428円
出所:文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』
※数値左:公立小学校平均、右:私立小学校平均
そして、家計へのプレッシャーは学費だけではありませんでした。妻の聡子さん(仮名・42)もまた、「大輝くん(仮名)のママ」として、他の母親たちとの新たなコミュニティに足を踏み入れる必要がありました。よくいくのは、ホテルのアフタヌーンティー。「ランチで7,000円が普通」という世界です。
「妻は『大輝が学校で恥ずかしい思いをしないように』とよく口にします」。良介さん自身も、その言葉を免罪符のように使うことがあり、普段から身に付けるものには気を遣うといいます。「ブランド品でなくてもいい。ただ周囲と釣り合うように努力をしないと息子に申し訳ない」。このように直接的な教育費のほかにお金はかかり、毎月給与が振り込まれても、1ヵ月でスッカラカン。家計は常にギリギリの自転車操業が続いています。
「正直、疲れるし、何でこんなに大変な思いをしているんだろうと、我に返るときもある。ただ今は、すべては息子のためにプラスになっていると、信じるだけです」
[参考資料]
文部科学省『令和5年度子供の学習費調査』