(※写真はイメージです/PIXTA)
JAの採用・給与状況
JA側も若手の離職や採用難が深刻になっていることは認識しており、人材確保・育成への対応について動きはじめています。JAグループ全体としては、人材流出に歯止めをかけるために人事制度改革を進めているところです。たとえば、
・初任給の引き上げ
・年功序列からジョブ型人事制度への移行
・中途採用の強化
といった内容です。さらに、通年採用(キャリア採用)、奨学金返済支援、シニア層のパート採用なども導入するところが出てきています。
また、JA職員の給与は一般企業と比べると安定しているものの、やや低めとされています。たとえば、JA職員の平均年収は約346万~453万円で、20代では約18万円、30代で約24万円、40代で約28万円の月収が一般的といわれています(給料バンク発表※1による)。
もちろん、職種や役職によって変わってくるでしょうが、基本的には年功序列の給与体系となっており、長く勤めることで年収が上がる傾向のようです。JA職員の仕事は安定しているものの、ほかの業界と比べると高いとはいえないかもしれません。
JA(農業協同組合)の役割
Aさんのお父さんの話によるとJAの役割は、「農家から農産物を買い集めて卸売業者などに販売をすることで、農家は販売までの手間を省くことができ、設備投資も抑えることができるようになっています。農家にとって必要な飼料や農薬などもまとめて仕入れることで価格も抑えられ、安定的に農家に卸すことができるんです。高額な農機具の購入の際の資金の借り入れも手伝っていますよ。農産物の流通にとっては欠かせない役割を果たしてきており、農家にとっても必要不可欠な組織であって、利益を優先した団体ではありません」とのこと。
さらにコメについては、「昔は生産量のほとんどを取り扱っていましたが、JAを通さないで出荷するケースも増えてきました。現在は3割まで減っていると聞いています。これでは、とても価格までコントロールできませんよ」と話します。
調べてみると、たしかにJAを通じて販売されているコメの量は、約159万6,000トンとなっており、全国の主食用米の生産量(約679万トン/令和6年産)に比べると、全体の約23%程度にとどまっています※2。JAを経由しない流通ルート(たとえば直販や民間業者との契約取引など)はいまや主流になりつつあるようです。
これには、以下のような理由が背景にあります。
・農家の選択肢が増えた(インターネット販売、契約栽培など)こと
・JAを通すと手数料がかかったり、出荷条件があったりするため
・小規模な米卸業者や企業との直接契約の増加
さらにお父さんは続けます。
「JAは若い人の離職率が高くなっていますが、私は頑張っている農家の人や日本の農作物を美味しく食べてくれる人のために役立っている、という自負があります。私なりにやりがいのある仕事ですが、息子はまだそこのところがわかっていないようです。転職したいと漏らしていますが、大学を卒業したときに一般企業は落ちまくってましたからね。まぁ、これからどうするかは本人次第ですね」と、寂しそうに笑いました。
※1 給与バンク
https://kyuryobank.com/komuin/ja.html
※2 農業協同組合新聞サイト
https://www.jacom.or.jp/kome/news/2024/12/241202-78038.php
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表