家を建てる。それは多くの人にとって、人生でもっとも大きな決断のひとつです。だからこそ、そこに込めた「思い」と「現実」のズレは、ときに計り知れない代償をもたらします。
この家が家族を壊した…「4,000万円で二世帯住宅」を建てた〈年金月18万円〉68歳元会社員、地獄の同居生活「こんなはずじゃなかった」 (※写真はイメージです/PIXTA)

二世帯住宅…曖昧なルールが火種に

株式会社AlbaLinkが結婚している男女に対して実施した『二世帯住宅の間取りに関する意識調査』によると、「二世帯住宅にするなら間取りはどうする?」の問いに対して、「完全分離型」が79.8%。「一部共有」は15.8%でした。完全分離型を希望する理由のトップは「適度な距離とプライバシーが保てる」(39.4%)。「ストレス少なくリラックスして過ごせる」(28.9%)が続きました。また「二世帯住宅にするにあたっての不安や心配」に対しては、最も多かったのが「生活リズムが違う」(29.9%)。「金銭の負担はどうするか」(27.9%)、「適度な距離を保てるか」(25.9%)が続きました。

 

鈴木家ではまさに今、二世帯住宅に対して多くの人が不安・心配に考えていることが、デメリットとして表面化しているわけです。

 

生活音の問題で生じた亀裂は、やがて家計の負担という、より現実的な問題へと発展していきました。鈴木さんの建てた二世帯住宅は、電気や水道のメーターが世帯ごとに分かれておらず、毎月の光熱費はすべて親世帯である正雄さん名義の口座から引き落とされます。

 

「建築時には『親子なのだから、その都度話し合って決めればいい』と安易に考えていました。しかし、実際に請求書を前にすると、どう分担すれば公平なのか、まったくわかりません」

 

子世帯は日中不在がちですが、人数が多いため水の使用量は多く、夜間の電気使用量もかさみます。一方、親世帯は在宅時間が長い――明確な基準がないまま、「とりあえず折半で」と息子に提案したものの、お互いに不公平感が残っているといいます。

 

「二世帯住宅なんて建てたから、家族の関係を壊してしまった。こんなはずじゃ、なかったのに……」。今さらながら、そんな後悔を抱くことも。

 

一方、何かと出費がかさむ子育て世帯にとって、親との同居の目的は「家計の節約」という場合が多いでしょう。その期待とは裏腹に、金銭的なルールを曖昧にしたことが原因で、関係が悪化するケースは珍しくありません。光熱費の支払い割合、固定資産税の負担……。これらを事前に書面で取り交わすなど、ドライな関係性も必要なのかもしれません。

 

二世帯住宅が完成し、同居を始めてから不平・不満が噴出した鈴木さん夫婦。順番は逆になったが、これからきちんとルールをつくり、関係を再構築していきたいといいます。

 

[参考資料]

株式会社AlbaLink『二世帯住宅の間取りに関する意識調査』