誰もが羨む富裕層の暮らし。しかし、実際に多額の資産を持つ人々の中には、その富をひけらかすことなく、むしろ積極的に隠して生活を送る道を選ぶ人が少なくありません。彼らはなぜ、富を隠すのでしょうか? 本記事ではAさんの事例とともに、富裕層の実態について、FP1級の川淵ゆかり氏が解説します。
お金持ちじゃないふりをしています…年金17万円・大地主の65歳次男「資産億超え・月200万円の不労所得」も、20年来恋人にもひた隠し・地味暮らしを装う理由【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

お金に苦労したことがない人生

65歳のAさんは、都内のマンションで一人暮らしをしています。会社員時代は部長職まで勤めましたが、60歳で定年を迎えると、好きな旅行を楽しむため、そのままリタイアしました。

 

年金は月額17万円ほどですが、地元では有名な大地主の次男として生まれたため生活に苦労したことはありません。現在の資産は1億円を優に超え、賃貸で区分マンションを所有していることから月額200万円程度の不労所得もあります。老後に差し掛かったこれからも生活に困ることはなさそうです。

 

実家がもともとお金持ちでしたし、若いころは某アイドルタレントに似ていたこともあって、モテたほうでした。しかしAさんはどこか冷めた一面があり、決して浮かれはしませんでした。そんなところから女性から見ると「冷たい男性」と映るところもあったようです。

資産家であることを隠す理由

周りからお金持ち扱いされるのが嫌だったAさんは、着る物や身に付ける物にもあまりお金をかけず静かに暮らしています。旅行が好きなのも自分のことを知らない人と接することができるからです。

 

Aさんは28歳のときにお見合い結婚しましたが、わずか1年で妻は出て行ってしまいました。父親の薦めで結婚した相手でしたから本当に好きだったかどうかもよくわかりませんでした。当時から仕事に没頭しており、ただでさえ冷たい印象を与えるAさんでしたから、妻は不安や淋しさを感じたのでしょう。子どももできないまま別れる結果となってしまいました。

 

そんなAさんですが、女性に関心がないわけではありません。45歳のころから20年ほど付き合っている離婚歴のある同い年の女性がいます。彼女は昔、仕事の取引先で働いていた女性で、彼女が東北に転勤になったあともAさんはときどき彼女の自宅に通う関係を続けていました。

 

定年退職後も東北に住み続け、現在はボランティア活動に励んでいる彼女は、Aさんに似たところがあるのか話も合って、Aさんはいまも旅行の合間にフラッと彼女の家に寄る関係です。彼女はAさんが資産家であることは知らず、彼女自身も一人で自立した生活を送っているため、二人のあいだで結婚の話が出ることはありません。

 

普段は口数の少ないAさんも彼女といるときはよく笑い、よくしゃべりました。ですが、自分の東京での生活については決して口にすることはありません。自分が資産家であることがわかってしまうと、彼女との関係が壊れてしまうような気がしたのです。

 

Aさんが自分のプライベートを周りに話したがらない理由はほかにもあります。Aさんには近所に中学のころから親しかった同級生がいましたが、5年ほど前に突然いなくなってしまいました。姿を消した理由はよくわかりませんが、噂によると投資詐欺にあったらしい、とのこと。5歳年上の兄も50代のときに、いまでいうロマンス詐欺にあったことがあり、Aさんの警戒心は強くなる一方でした。

 

「いまはSNSで突然知らない女性からダイレクトメッセージが来る時代でしょ。私はこういった類のものはまったくダメですが、昔の職場の後輩も引っかかったという話も聞いたことがあります」