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介護で孤立無援に…親の介護の限界
当初は、自宅での介護を続けていくことを考えていました。「人の手を借りれば何とかなるだろう」と考えていたのです。しかし、現実の介護は想像をはるかに超える負担でした。特に認知症の母親に気を配りながらという状況は過酷を極めます。要介護度が上がるにつれて、介護保険の自己負担額も増え、さらに保険適用外のサービスや消耗品の費用もかさみます。
「このままでは、仕事を続けることができない……」
佐藤さんは、日に日に追い詰められていきました。会社の定時で帰れる日は少なく、介護のために早退したり、欠勤したりすることも増えていました。このままでは、いずれ会社にいられなくなるかもしれないという不安が、佐藤を襲いました。
そこで佐藤は、両親、またはどちらかだけでも老人ホームに入居させることを検討し始めました。しかし、施設の情報を集めれば集めるほど、その費用の高さに愕然とします。都内近郊の老人ホームの入居費用は数百万円、月額利用料も20万円を超えるのが当たり前のようです。
「月額費用の安いところも見つけたのですが、安かろう悪かろうというじゃないですか。その施設が親にとっていいのかも判断ができなくて……」
両親の年金は、二人合わせても月に20万円に満たない額。老人ホームに入居するなんて、非現実的のように思えました。
「身銭を切るしか……」
そんな状況に絶望を覚える佐藤さん。株式会社LIFULL/LIFULL 介護『介護施設入居実態調査 2025』によると、入居一時金は「なし」が最多で25.4%。「200万円未満」が34.2%、「200万~400万円未満」が14.0%、「400万~600万円未満」が9.3%。また月額費用は「10万円未満」が9.9%、「20万円未満」が33.6%と最多です。しかし「20万円以上」が49.6%とほぼ半数を占めている現状を考えると、ホームへの入居を検討する際、20万円以上がひとつの目安になるでしょうか。
また介護は孤独を生みます。身体的、精神的、経済的な負担により、周囲との交流機会が減少。ひとり追い込まれてしまうことも珍しくありません。孤立無援の状態に陥り、最悪の結果に至ってしまうケースを、ニュースなどでも目にしたことがあるでしょう。
佐藤さんの場合、幸い、同僚のなかに介護経験者がいて、何かと気にかけてくれました。そして地域包括支援センターに相談し、費用感など含めて適した施設を紹介してもらったといいます。
「父と母は、別々の施設に入居する予定です。本当は、同じ施設がよかったのですが……それだけが心残りです」
そんな後悔を口にする佐藤さん。介護は「いつか」訪れるものではなく、「いつ」訪れてもおかしくないもの。両親の介護が同じタイミングで訪れることも考えられます。そのような状況に直面したら、どうすべきか。親も含めて話し合い、備えを怠らないことが、自身の生活を守るうえでも重要です。
[参考資料]
厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』