賃金の継続的な増加と実質賃金の課題
厚生労働省『毎月勤労統計調査 令和7年4月分結果速報』によると、名目賃金は堅調な伸びを示しました。
事業所規模5人以上の場合、現金給与総額は前年同月比2.3%増の302,453円となり、40ヵ月連続でプラス。また、事業所規模30人以上では2.7%増の339,229円となり、50ヵ月連続のプラスでした。この背景には、きまって支給する給与が2.2%増(289,551円)、所定内給与も2.2%増(269,325円)と安定的に伸びていることに加え、特別に支払われた給与が4.1%増の12,902円と大幅に増加したことが挙げられます。
特に、所定内給与の継続的な増加は、ベースアップなどによる賃上げの動きが定着しつつあることを示し、企業が従業員の基本給部分の引き上げに積極的になっている状況がうかがえます。
一般労働者の賃金動向を見ると、現金給与総額は前年同月比2.6%増の388,583円で、49ヵ月連続のプラス。所定内給与も2.7%増の342,434円と、51ヵ月連続の増加となりました。一方で、パートタイム労働者の時間当たり給与(所定内給与)は1,362円と、前年同月比3.6%増を記録し、46ヵ月連続のプラスとなっています。これは、労働力不足を背景に、企業がパートタイム労働者の待遇改善にも取り組んでいる表れと考えられます。
しかしながら、名目賃金が継続的に増加している一方で、実質賃金は依然として厳しい状況にあります。
消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)で実質化した現金給与総額は83.7(前年同月比1.8%減)、消費者物価指数(総合)で実質化した現金給与総額は85.2(前年同月比1.3%減)となり、いずれも4ヵ月連続のマイナスです。これは、消費者物価指数がそれぞれ4.1%上昇、3.6%上昇と高い伸びを示しているため。賃金上昇が物価上昇に追いついていない現状は、家計の実質的な購買力を低下させており、個人消費の回復を阻害する要因となっています。企業は賃上げを積極的に行っているものの、それを上回る物価上昇が国民生活に重くのしかかっている構図です。