夫婦で支え合ってきた人生。突然の別れの後、残された妻を待っていたのは、想像以上に厳しい「遺族年金」の現実でした。夫の年金に頼っていた生活が一変し、「これからどうやって暮らしていけばいいのか」と戸惑う人は少なくありません。多くの人が誤解しがちな遺族年金の仕組みと、その支給額の壁。さらに2028年に予定される制度改正が、遺族の暮らしにどんな影響をもたらすのでしょうか。
なぜ、こんな仕打ちを…68歳夫を亡くした67歳妻、年金月18万円が頼りだったが「遺族年金」の現実に血の気が引く (※写真はイメージです/PIXTA)

遺族厚生年金、見直しへ

一家の大黒柱を失った遺族のセーフティネットとなる遺族年金。ルールは複雑で、しっかりと把握していないと、田中さんのように「思った以上にもらえない」「こんな少ない額では生きていけない」という事態に陥るので、最低限のルールはしっておきたいもの。

 

そんな遺族年金ですが、大きく変わろうとしています。5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が通常国会に提出されました。今回の法案による変更は、2028年4月に施行予定です。

 

現状、子どものいない60歳未満の場合、30歳未満の妻は5年の有期給付があり、30歳以上は無期限の給付。一方男性は、55歳まで受給権がなく、60歳以上は無期限の給付があります。改正後は、男女ともに、60歳未満は「5年の有期給付(増額)+配慮措置」、60歳以上は無期限の給付となります。

 

5年の有期給付については、新たに「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍に。また、5年間の有期給付の終了後も、 障害状態にある人(障害年金受給権者)や、収入が十分でない人は、引き続き増額された遺族厚生年金を受給することができます(例:単身の場合、就労収入が月額約10万円(年間122万円)以下であれば、継続給付が全額支給。収入が増加するにつれて収入と年金の合計額が緩やかに増加するよう年金額が調整される。概ね月額20~30万円を超えると、継続給付は全額支給停止となる)。

 

いま話題になっている「年金改革関連法案」は、遺族厚生年金のほかにも、基礎年金の底上げや、加給年金の変更など、さまざまな変更が盛り込まれています。影響の大きな人もいれば、まったくない人も。さまざまな批判も聞こえてきます。いずれにせよ、老後に大きな影響を及ぼす年金。しっかりとルールを把握してうえ、年金で補えない部分はしっかりと資産形成を進めて準備をしておきたいものです。

 

[参考資料]

厚生労働省『遺族厚生年金の見直しについて』