年老いた親を思いやる気持ちと、自分自身の生活とのはざまで揺れ動く子世代。年金だけでは暮らしが立ち行かず、繰り返される「金の無心」……そのとき、最も大切なことは?
「もう、二度と関わらないで」と絶縁を宣言し、55歳娘は実家を出た…〈年金月8万円・貯金ゼロ〉金の無心を繰り返す80歳父の哀れな末路 (※写真はイメージです/PIXTA)

自己犠牲までして、親の「おねだり」に応えるべき?

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』によると、親にお金を渡している(仕送りをしている)世帯はわずか2.0%。50代世帯では少し増えて3.8%。平均月5.4万円を渡しています。介護費や医療費と、何かと出費がかさんでいくからでしょう。自身の年齢=親の年齢があがるにつれて仕送り額は増えていく傾向にあります。

 

【年齢別・親に仕送りをしている世帯の割合と平均仕送り額】

20代…2.75%、3.9万円

30代…2.69%、5.2万円

40代…3.19%、4.9万円

50代…3.84%、5.4万円

60代…2.62%、6.7万円

70代以上…0.34%、8.7万円

 

民法によると、扶養義務者は両親、祖父母、子どもなどの直系尊属と兄弟姉妹、配偶者が該当します(民法第877条 第1項)。親が生活できないなら、子が何とかしなければならないのが現状です。ただし、自分の生活を犠牲にしてまで親の面倒を見る必要はありません。完全放棄は認められませんが、民法上も、親への扶養の程度は、扶養者の収入に応じた程度で足りるとされています。

 

美智子さん、この1件以来、一郎さんとは一度距離を置き、実家には行かなくなりました。「一度、よく頭を冷やしてもらわないと、私の気が収まりません」。何度も何度も許しを請う一郎さん。それは3ヵ月ほど続いたといいます。最終的にお金の管理はすべて美智子さんがすることを条件に、一郎さんの謝罪は受け入れました。

 

「多少の息抜きはもちろん大事よ。でも、無限にというわけにはいきませんから」

 

娘にすっかり財布を握られ、一郎さん、意気消沈気味だとか。とはいえ、親が生活に困窮していたら、無条件の支援の前に、まずは親の貯蓄や収入、生活費を把握。ムダがないか確認をしたうえで、ともに納得の範囲で援助することが大切です。

 

[参考資料]

厚生労働省『令和4年 国民生活基礎調査』

e-Gov 法令検索『民法第877条 第1項』(扶養義務者)