長期譲渡所得・短期譲渡所得の税金を計算する方法
譲渡所得の税額は、次の計算式によって求めることができます。
ここからは、計算式を5つのステップに分け、具体的に解説します。
ステップ1:譲渡価格を計算する
はじめに、譲渡価格を計算します。譲渡価格とは、売却した不動産が市場で実際に取引された金額のことで、基本的には売買契約書に記載された金額を指します。
ただし、売却時に精算される固定資産税や都市計画税を売主が負担した場合には、これらの金額も譲渡価格に含めて計算します。たとえば3,000万円で不動産を売却し、固定資産税の精算分が25万円あったとき、譲渡価格は3,025万円となります。
このように、実際に手元に入る金額よりも高くなることもあるため、譲渡価格の計算時には税の精算や付随する金額ももれなく確認しましょう。
ステップ2:取得費を計算する
取得費とは、不動産を購入する際にかかった費用全体のことを指します。物件購入価格だけでなく、不動産取得税や登記費用、仲介手数料といった購入に付随する諸費用もすべて取得費に含まれます。
また、建物については「減価償却」を適用しなければなりません。これは、建物の価値が年数とともに下がることを考慮し、取得費から一定の金額を差し引く処理のことです。減価償却は「定額法」と「定率法」の2種類の方法で計算します。償却率は建物の構造によって異なるため、国税庁の定める一覧を参照し、自身の物件に適した率を使いましょう。
・定額法:取得価額×定額法の償却率
・定率法:未償却残高×定率法の償却率
また、売った土地や建物が先祖伝来のものであるなど取得費がわからない場合や、実際の取得費が譲渡価格の5%よりも少ないときは、売却金額の5%相当額を取得費(概算取得費)とすることができます。
減価償却の具体的な計算例や注意点については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
【関連記事】不動産投資の節税効果を最大化させる「減価償却」の仕組みとは?シミュレーションや注意点を紹介!
ステップ3:譲渡費用を計算する
譲渡費用とは、不動産を売却するためにかかった費用を指し、譲渡所得を算出する際に経費として差し引くことができます。代表的なものとしては、不動産会社に支払う仲介手数料、契約書に貼付する収入印紙代、司法書士に支払う登記費用や土地の測量費用などが挙げられます。
これらの費用は一見見逃しがちですが、合計すると数十万円から場合によっては百万円を超えるケースもあるため、きちんと計上しておくことで節税につながります。証明資料(領収書など)は必ず大切に保管しておきましょう。
・仲介手数料
・収入印紙代
・登記費用
・土地測量費用 など
ステップ4:特別控除を利用する
譲渡所得の計算において、一定の条件を満たすと特別控除を受けることができ、課税対象となる譲渡所得額を大幅に減らすことができます。たとえばマイホーム(居住用財産)を売却した場合には、最大3,000万円まで控除できる場合もあります。
そのほかにも、公共事業などのために土地や建物を譲渡した場合は5,000万円、特定住宅造成事業のための土地譲渡では1,500万円、農地保有の合理化などのための土地譲渡では800万円の控除が受けられます。これらは用途や譲渡時期、取得年によって要件が細かく分かれているため、事前に制度内容を確認し、自身が該当するかどうかをチェックすることが重要です。
特別控除の例
・公共事業などのために土地や建物を譲渡した場合:5,000万円
・マイホーム(居住用財産)を譲渡した場合:3,000万円
・特定土地区画整理事業などのために土地を譲渡した場合:2,000万円
・特定住宅造成事業などのために土地を譲渡した場合:1,500万円
・平成21年及び平成22年に取得した土地を譲渡した場合:1,000万円
・農地保有の合理化等のために土地を譲渡した場合:800万円
・低未利用土地等を譲渡した場合:100万円
ステップ5:税率を用いて計算する
最後に、これまでに求めた譲渡所得に対して、長期譲渡所得では20.315%、短期譲渡所得では39.63%の税率をかけて最終的な税額を算出します。
また、確定申告は特別控除などを利用して税金が生じない場合であっても、売却した翌年には確定申告を行う必要があるため、申告漏れがないように気をつけましょう。
