長期譲渡所得と短期譲渡所得の判断基準
ここまで解説したように、長期譲渡所得となるか短期譲渡所得となるかで税率が約2倍変わるため、所有期間の定義と判定時期についてしっかりと理解しておくことが重要です。
以下からは、譲渡所得に関する判断基準や定義、具体的な計算例を紹介します。
判断基準となる「所有期間」とは?
譲渡所得の課税区分を判断する際の「所有期間」とは、不動産を取得した日から譲渡した年の1月1日時点での所有期間によって判断されます。単純に取得日から売却日までを指しているわけではない点に注意が必要です。
譲渡日と取得日の考え方
譲渡日は、基本的には不動産の引き渡しが実際に行われた日を指します。ただし、納税者の選択によって、契約の効力が発生した日、つまり一般的には売買契約の締結日を譲渡日とすることも可能です。
取得日もまた原則として引き渡しの日とされますが、こちらも納税者の判断で売買契約の日を取得日とすることが可能です。
建設会社との間で工事請負契約を結び建物を建築した場合には、建物完成後の引き渡し日が取得日となります。また、相続や贈与によって取得した場合には、被相続人や贈与者の取得日を引き継ぐというルールもあります。
こうした日付の取り扱いは複雑になりがちであり、判断を誤ると課税区分を間違えるリスクもあるため、不安がある場合には税理士や税務署などに相談するようにしましょう。
所有期間判断の具体例
ここまで解説したように、所有期間の判断はやや複雑なため、具体的な例で確認してみましょう。下記は、2026年1月31日に不動産を売却する2つのケースを比較した図です。

まず、2021年2月1日に不動産を購入し、その不動産を2026年1月31日に売却した場合、不動産を物理的に所有している期間は5年です。
しかし、税法上は「売却年の1月1日時点」で所有期間を判断します。不動産を取得した日から売却年である2026年の1月1日時点では、この不動産を取得してまだ5年が経過していないことになります。したがって、このケースでは「短期譲渡所得」として扱われます。
では、不動産を2020年12月1日に購入していた場合はどうでしょうか。この場合、2026年1月1日の時点で不動産を所有して5年経過しているため、「長期譲渡所得」となります。

