厚生労働省「国民生活基礎調査の概況(令和5年)」によると、日本全体の平均世帯年収は524.2万円だそうです。そのようななか、世帯年収1,300万円の牧野夫妻は、贅沢をしていないにもかかわらず「貯蓄が進まない」と悩みます。この世代が陥りやすい「支出過多」の落とし穴について、その対策とともにみていきましょう。石川亜希子AFPが解説します。※プライバシー配慮のため、個人情報を含む一部情報は加工しています。
そんなお金、あると思うか?…年収1,000万円の49歳サラリーマン、修学旅行直後の“浮かれる息子”に告げた「非情な現実」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

修学旅行から帰ってきた息子の「衝撃のひと言」

そしていま、新たに和啓さんの頭を悩ませていることが2つあります。

 

まずは長女の受験が迫るなか、妻の裕子さんが「今年は長女の受験に寄り添うため就業時間を減らす」と宣言したのです。それまで時短の派遣社員として働いていた裕子さんは、すでに派遣先とは交渉済みとのこと。これで世帯収入としては月々マイナス5万円となります。

 

内心、「勝手に決めないでくれよ」と思った和啓さんでしたが、長女のためと言われては反論することもできません。ただし夫婦で話し合い、長女の受験が終わった暁には就業時間をフルタイムに増やすことにしました。

 

そして、さらに頭を抱えているのが長男の教育費です。

 

今年度、長男は修学旅行としてオーストラリアに10日間ほど滞在。ホームステイやグループでの自由行動など、貴重な経験になったことは間違いないのですが、トータルで70万円ほどの費用がかかりました。せっかく手に入った夏のボーナスも、長女の夏期講習とこの修学旅行の費用で跡形もなく消えていきます。

 

妻の収入減で痛い出費だ……と思っていたところ、修学旅行から帰ってきた長男が目を輝かせて言いました。

 

「めっちゃ楽しかった! ねえ俺、留学に行きたい!」

 

長男の通う学校は留学プログラムも充実していますし、和啓さん自身も仕事をするなかで、グローバル教育の必要性はひしひしと感じているところです。しかし、本当に長期で行くとなると、3ヵ月の短期留学でも約150万円、1年間の場合約500万円かかります。

 

「そんなお金、あると思うか?」

 

金銭的な余裕がない焦りと思い通りにいかない苛立ちから、土産話で盛り上がる長男に対して思わずそうボヤいてしまいました。

 

えっ、どういうこと? ウチ、お金ないの?…唖然とする息子

長男の泣きそうな声にハッとわれに返った和啓さん。

 

「なんてな、冗談だよ。でも、なにかするにもそれだけお金がかかるんだってことは知っておこうな」

 

和啓さんはなんとか取り繕おうと、ひきつった笑顔でそう言い残し、慌てて自室に戻りました。