厚生労働省「国民生活基礎調査の概況(令和5年)」によると、日本全体の平均世帯年収は524.2万円だそうです。そのようななか、世帯年収1,300万円の牧野夫妻は、贅沢をしていないにもかかわらず「貯蓄が進まない」と悩みます。この世代が陥りやすい「支出過多」の落とし穴について、その対策とともにみていきましょう。石川亜希子AFPが解説します。※プライバシー配慮のため、個人情報を含む一部情報は加工しています。
そんなお金、あると思うか?…年収1,000万円の49歳サラリーマン、修学旅行直後の“浮かれる息子”に告げた「非情な現実」【FPの助言】 (※写真はイメージです/PIXTA)

和啓さんが絞りだした「いま自分にできること」

その日の晩、和啓さんは頭を悩ませていました。

 

子どもの「もっと海外で学びたい」という意欲は尊重すべきことですが、家計の面から考えると“想定外の高額な出費”です。

 

「わが子の可能性を信じたい」「周囲に遅れたくない」という心理はどの親にもあることでしょう。しかし、そうなると教育費は天井知らずとなりがちです。教育費で家計を圧迫しないために、先手を打ってできることを考えてみましょう。

 

1.教育費の「全体像」を可視化する

大学卒業+α(留学など)の可能性も含めて、1人あたりどれくらいかかるのかを一覧にすることをおすすめします。

 

たとえば、私立中高+私立理系大学+留学であれば、トータルで2,000~2,500万円以上はかかるでしょう。教育費は総額で考えることが重要です。

 

2.「いまかける教育費」が将来にどう響くかを試算する

現時点では問題なく教育費を支払うことができていたとしても、その分、住宅ローンの返済がギリギリだったり、老後資金の準備がおろそかになったりすると、定年後の老後破綻リスクが高まります。

 

教育費に偏った支出を続けていると老後資金や住宅資金にどう影響するか、ライフプランシミュレーションを受けて確認することもおすすめです。

 

3.選択肢を広く持つ

「絶対に中学受験を成功させなければ」「私立に入れなければ」「子どもの願いを叶えなければ」などという固定観念は捨てましょう。留学せずとも、国際教育に力を入れている公立校もあります。

 

親世代の先入観を持つことなく、最新の情報を集めて柔軟に進路を考える視点を持つことが大切です。

 

4.親の働き方も「教育費」戦略の一部

裕子さんは「子どもの受験に寄り添いたいから働く時間を減らす」という選択肢をとりましたが、親の働き方も戦略の一部です。「いつ、どのくらいの教育費が必要か」ということから逆算して働き方を設計する必要があります。

 

5.祖父母のサポート(贈与)も活用する

無理なく頼れる場合は「家族のリソース全体で戦う」という意識も持っておくといいかもしれません。年110万円以内の暦年贈与や教育資金の都度・一括贈与など、非課税制度をうまく活用することも考えてみましょう。

 

6.「家庭の教育方針」は子どもにも共有する

「なんでも好きにさせてくれる親」である必要はありません。「限りある予算のなか全力で応援する親」として、経済観念や自分で考える力を育てることも立派な教育ではないでしょうか。

 

「留学費用は出せるけど、他を調整してもらう必要がある」など現実を共有し、納得してもらうことも大切です。