決済・引き渡し時の注意点
ここからは、決済や引き渡しをする際の注意点を解説します。金銭的・法的トラブルに発展するリスクを多く含んでいるため、慎重に手続きを進めるようにしましょう。
決済に必要な書類を準備する
不動産の決済をスムーズに進めるためには、必要な書類を事前に漏れなく準備しておくことが重要です。
代表的な書類には、登記識別情報通知書(旧登記済権利証)、住民票、印鑑証明書、固定資産税の納税通知書、本人確認書類などがあります。また、金融機関を通じてローン返済中の場合は、抵当権抹消に必要な書類も金融機関や司法書士と連携して決済日当日の授受の流れを整理しておく必要があります。
残代金の受け取りと抵当権の抹消手続きを行う
不動産売買契約の最終段階として、残代金の受け取りと抵当権抹消登記を行います。
通常、司法書士が決済に立ち合い、登記に必要な書類が揃っていることを確認した上で、買主から売主に対して残代金の振り込みを行います。
そして、売主の口座に残代金が着金後、売主が住宅ローンを利用している場合はその資金から金融機関に対して一括繰上返済を行うことで、抵当権抹消書類を金融機関から受け取ることができるようになります。
登記手続きは司法書士が行い、所有権移転と抵当権抹消の登記を一括で申請します。基本的には不動産会社と司法書士に任せておけば問題ありませんが、頼り切るのではなく不明点があればその場ですぐに質問し、解決するようにしましょう。
引き渡し後のトラブルを防ぐ
不動産の引き渡し後に発生しやすいトラブルのひとつが、設備の故障や物件の瑕疵(かし)に関するものです。売却前には問題がなかったと思っていても、買主が入居後に設備の不具合を発見し、「説明がなかった」として責任を問われるケースもあります。
こうしたトラブルを防ぐために、引き渡し前に設備の動作確認を行い、その結果を記録しておきましょう。給湯器やエアコン、換気扇、水回りなど、生活に関わる設備は一通り確認し、不具合があれば修理や交換の対応を検討することも大切です。
確定申告をするときの注意点
最後に、確定申告時における注意点を解説します。すでに不動産売却は完了しているものの、確定申告に不備があると延滞税や加算税を課されるリスクがあるため、税務署や税理士などの専門家と相談しながら慎重に手続きを進めましょう。
譲渡所得税が発生する可能性を考える
不動産を売却して利益が出た場合、その利益に譲渡所得税が課税されます。この譲渡所得税は、不動産を保有していた期間に応じて「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分けられ、税額が大きく変わるため注意が必要です。
不動産を売却した翌年の2月には確定申告と納税を行う必要があり、申告漏れがあると延滞税や加算税を課せられる可能性があるため、正しく計算し適切に納税しましょう。譲渡所得税の計算方法や、税負担を抑える方法については、こちらのコラムで詳しく解説しています。
【関連記事】長期譲渡所得と短期譲渡所得とは?5年以内の不動産売却は注意が必要
マイホーム(居住用財産)特別控除の適用条件を確認する
不動産の売却によって利益が出た場合でも、一定の条件を満たすことで、税負担を大幅に軽減できる制度があります。そのひとつが、マイホーム(居住用財産)を売却した際に適用される「3,000万円の特別控除」です。
この制度を利用すれば、譲渡所得から最大3,000万円を控除でき、課税対象がゼロになる場合もあります。ただし、細かな適用条件が設定されているため、事前に国税庁のホームページなどで確認しておくことをおすすめします。
マイホーム買い替え特例の活用で税負担を軽減する
マイホームを売却して利益が出た場合、「買い替え特例」の活用により、譲渡所得税の支払いを先延ばしにできる可能性があります。買い替え特例とは、一定の条件を満たす場合に限り、売却によって得た譲渡所得に対して課税されず、買い替えた不動産の将来の売却時まで課税を繰り延べることができる制度です。
ただし、この制度についてはあくまでも将来への繰り延べに過ぎず、買い替えた不動産を売却するタイミングで課税が発生することに加え、3,000万円の特別控除と併用ができないため、将来の計画も踏まえ、適切に制度を利用する必要があります。
こちらも制度の適用には細かい条件や申告手続きが求められるため、事前に国税庁のホームページを確認するほか、必要に応じて税理士などの専門家と相談し、自身の売却計画に合った節税対策を立てることが大切です。


