(※写真はイメージです/PIXTA)
年金増額で安泰のはずが…老後が一変「早く年金を受け取っていれば」
ただ、年金の月受取額が増えたことの喜びは束の間でした。
「年金を受け取り始めたあと、すぐに妻がくも膜下出血で倒れて……後遺症が残って、何をするにしても人の手が必要な状態です」
これから夫婦で穏やかな老後を過ごす、そう思っていた直後の想定外。ほぼ寝たきりとなった妻の姿を眺めては、「老後に対して過度に心配するのではなく、どう過ごしたいのか、考えたらよかった」と後悔の言葉がこぼれるといいます。
さすがにこのような想定外は誰もわかるはずがありません。しかし受取額の増額ばかりが注目される「年金の繰下げ受給」ですが、メリットだけでなくデメリットもあります。
繰下げ受給のデメリット①長生きしないと「元が取れない」
65歳で年金を受け取った場合と、70歳まで繰り下げた場合を比較すると、受取額の総額が繰下げした場合が上回るのは81歳前後。それより先に亡くなると、65歳で受け取っていた場合のほうが多くなります。
繰下げ受給のデメリット②「税金や保険料」が増える場合がある。
年金額が増えると、それに応じて所得税・住民税も増えます。また、後期高齢者医療保険料や介護保険料の負担額が増えるケースも。一定以上の所得になると、医療費の自己負担が1割→2割に上がることもあるので注意が必要です。
繰下げ受給のデメリット③遺族年金や配偶者への影響
年金の繰下げ中に亡くなると、年金は一切受け取らずに終わることになります。また、遺族年金や加給年金に影響が出る可能性があるため、家族の年金計画との兼ね合いも必要です。
昨今、「長生きリスク」への備えのひとつとして、「繰下げ受給」のメリットに焦点が当たるようになりました。しかし何事にもメリットしかない、ということもありません。制度上のデメリットはもちろんのこと、結局は、年金を65歳から受け取るのがいいのか、それとも繰下げ受給を選んだほうがいいのか、個人によって異なるうえ、状況によっても捉え方は変わるでしょう。
――繰下げ受給を選択してよかった!
――繰下げ受給を選択しなきゃよかった!
どちらの意見も色々と聞けるので、それらを参考に、自身はどう思うのか、じっくり考えて決めるべきです。
[参考資料]
日本年金機構『年金の繰下げ受給』