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繰下げ受給を選択した2人の男性
東京都在住の元サラリーマン、吉田正雄さん（仮名・72歳）は、65歳で定年を迎えた当時、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた見込み年金額が月額およそ17万円と知ったといいます。
それまで契約社員として働き、月25万円の給与を手にしていた吉田さん、「65歳からこの金額では、ちょっと心許ない」と感じたといいます。そのとき、興味をもったのが「年金の繰下げ受給」。これは、本来65歳から受け取れる年金を、66歳以降に繰り下げることで、年金額が最大で84歳まで増えるという仕組みのことで、受給開始を1ヵ月繰り下げるごとに0.7％ずつ受給額が増え、70歳で42％、そして2022年4月以降は75歳まで繰下げ可能となり、最大84％増となります。
吉田さんは、「老後はいつまで続くかわからない。たくさん受け取れたほうが安心だ」と考え、繰下げ受給を選択。72歳になってから年金を受け取り始めました。その結果、毎月の受給額は「17（万円）×1.558（％）」で月26.5万円ほどに。手取りにすると、月22万円ほどだといいます。
額面で月9.5万円、1年で114万円。10年にすると1,000万円以上の差となります。
「これだけのお金があれば、貯金を取り崩すのは、家を直すときとか――何か大きな出費が発生したときだけ。貯金を取り崩して生活するということがないから、老後のお金の不安はほとんどなくなりました」
初回の年金振込額を見たときの興奮が忘れられないといいます。一方で、年金の繰下げ受給を選択して後悔しているケースも。65歳から年金を受け取っていれば、吉田さんと同じ、月17万円程度だったという佐藤仁良さん（仮名・75歳）。勤めていた会社では65歳で辞める人が多かったものの、佐藤さんは引き続き働くことに。給与があるうちは年金はいらないと、繰下げ受給を選択しました。
「10歳下の妻と共働きでしたが、妻は60歳の定年までは働きたいといっていました。老後に対しての不安も大きかったので、それであれば妻が定年を迎えるまで働いて、年金の受取額を増やすことを選択したんです」
佐藤さんは70歳から年金の受給を開始。月17万円だった年金は、月24万円、手取りにすると月20万円ほどになりました。「夫婦で暮らしていくには十分な金額。安心して老後を過ごしていける――そう思っていました」と佐藤さんは振り返ります。
