SNSを通じた詐欺被害が過去最悪の水準に達し、特に40~60代の世代が新たなターゲットとなっています。なぜ今、働き盛りの中高年層がSNSをきっかけに騙されてしまうのか。警察庁が発表した最新の統計データや、被害の現場で起きている実態をもとに、その理由と背景をみていきます。
詐欺被害「過去最悪」と警察庁発表…今、40~60代がSNSで騙される理由 (※写真はイメージです/PIXTA)

SNS型詐欺…どんな人が狙われているのか?

このようなSNS型詐欺で被害に遭っているのは、必ずしも高齢者ばかりではありません。実は、40代から60代の働き盛りの世代が多く被害に遭っています。なかには投資経験のある中高年男性も多く、詐欺師側も相手の知識や性格を見極めたうえで言葉巧みにアプローチしてきます。

 

また、SNS型ロマンス詐欺では、男女問わず中高年がターゲットになるケースが増えています。海外在住者を装って恋愛感情を育み、「病気の治療費」や「日本に来る旅費」などの名目で金銭を要求してくるケースが多く見られました。ツールとして多く使われていたのがInstagram、Facebook、LINEなど。TikTokも新たな接点として浮上しており、若年層への拡大も懸念されます。

 

詐欺被害を未然に防ぐには、実は「前兆」を捉えることも大切です。警察庁の統計によれば、資産状況や金融口座を探る「予兆電話」が全国で年間19万件以上確認されています。これは、詐欺師が“ターゲットを絞るための準備”として行うもので、電話口で個人情報を話す危険性がより一層高まっていることがうかがえます。

 

さらに、SNS上で展開される「著名人になりすました偽広告」も被害拡大の要因です。「有名投資家が薦めている」「安心して始められる」などといった文句に騙されるケースが後を絶ちません。

 

警察はこうした動きを受けて、2024年に「特殊詐欺連合捜査班(TAIT)」を全国に配置し、広域での連携捜査を開始しました。国内外の犯行拠点に対しては摘発も行われており、たとえばベトナムやカンボジアに拠点を置いた詐欺グループが検挙されるケースもありました。

 

このような詐欺から身を守るために、最も大切なのは「すぐに信用しないこと」。甘い話や親しげな言葉の裏に、詐欺の影が潜んでいるかもしれません。特に、SNSやメール、電話で「お金」の話が出てきたら、必ず一呼吸おいて考える習慣を持ちましょう。

 

また、家族や知人との情報共有も効果的です。「こんな電話があった」「最近、SNSで投資の話を持ちかけられて…」といった日常の会話が、被害を未然に防ぐカギとなります。

 

[参考資料]

警察庁『特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について』